Unheld Hands

閉ざされた扉の向こう 言葉をなくした光がいた 私はそっと俯いたまま 触れずに過ぎた 夜の姿 「覚えてる？」 その声は風のように 「逃げたのは、あなたでしょ」 答えられない 胸の奥で 溶けかけた名前が揺れる 触れられなかった 一言さえ零せずに 時を止めたのは私だった 今もあの日の手触りが 指先で凍えている 窓の外　音もなく 雨も降らず　風もなく 静けさだけが すべてを覆い 二人の影を一つにした ｢それでも、いい｣ と呟いた私に 彼女はただ 見つめ返して 何も言わず、頷いた 忘れたいわけじゃない いられないこと、それが怖いだけ 握れなかったその手が 今も心を刺してくる それでも、やっと ありがとうと言える