
雨粒が 窓を叩くたび 知らない昨日が 瞬きをする 初めてのはずの曲がり角を 足だけが 迷わない 古い写真の端っこで 別の少年が こちらを見てる 身に覚えのない傷だけが 天気を先に 知らせてる 記憶と人生の 継ぎ目はどこだ これはきっと 記憶の誤配 宛先の違う昨日が この名前に届いていた 時間の裏側で 他人の昨日が老いてゆく 忘れたんじゃない 消えたんじゃない 思い出の席を 譲っていただけ 水音が 近づくたび 鏡の曇りが 過去を映す 濡れた髪 知らない輪郭 覚えのない体温に 呼吸だけが 立ち止まる 顔も 名前も 出てこない それなのに 身体だけが 懐かしがる 借り物の昨日を連れて 今日だけが 増えていった 積もった時間が 境界を埋めて いつしか どちらも自分になった 失くした名前より もう一度 聞きたい声 記憶の底ではなく 忘却の手前で 遠い影 残った体温 戻る場所さえ 分からないのに 雨粒が 窓から消えて 水音だけが 遠のいていく ひとつの身体に 二つの昨日 ひとつは 名前をくれた もうひとつは 名前を知っていた BEFORE MY NAME 名前になる前の記憶が ようやく 今の背中に触れた

