【Center Line】 Duo: 一本(いっぽん)の道(みち)が 二(ふた)つの場所(ばしょ)を分(わ)けている 車(くるま)が通(とお)り 人(ひと)が渡(わた)り 向(む)こう側(がわ)には もう一(ひと)つの祈(いの)り 近(ちか)いのに 同(おな)じ場所(ばしょ)ではない 離(はな)れているのに 忘(わす)れてはいない 【Left Side:Temple Now】 Voice Bright: 老樹(ろうじゅ)の影(かげ)が 境内(けいだい)を包(つつ)む 左(ひだり)に本堂(ほんどう) 右(みぎ)に大師堂(だいしどう) 互(たが)いを見(み)つめるように 静(しず)かに建(た)っている その間(あいだ)で しあわせ観音(かんのん)が微笑(ほほえ)む 合掌(がっしょう)した手(て)の中(なか)に 小(ちい)さな蓮(はす) 幸(しあわ)せは 遠(とお)くから届(とど)くものではなく すでに両手(りょうて)の中(なか)に あるのかもしれない 【Left Side:The Beginning】 弘仁六年(こうにんろくねん) 大師(だいし)が森(もり)と呼(よ)ばれた場所(ばしょ) 弘法大師(こうぼうだいし)が 護摩(ごま)を焚(た)いていたとき 空(そら)に紫雲(しうん)が広(ひろ)がり 大日如来(だいにちにょらい)が現(あらわ)れたという この地(ち)は霊地(れいち) 心(こころ)あるなら 一宇(いちう)を建(た)てよ その告(つ)げを受(う)け 大師(だいし)は像(ぞう)を刻(きざ)む 光(ひかり)そのものを表(あらわ)す 大日如来(だいにちにょらい) そして寺(てら)は 大日寺(だいにちじ)と呼(よ)ばれた 【Left Side:Fire and Return】 けれど 建物(たてもの)は永遠(えいえん)ではなかった 天正(てんしょう)の兵火(へいか) 堂塔(どうとう)は焼(や)け 景色(けしき)は灰(はい)に変(か)わった 名前(なまえ)だけでは 屋根(やね)を支(ささ)えられない 記憶(きおく)だけでは 雨(あめ)を防(ふせ)げない それでも人(ひと)は 柱(はしら)を立(た)て直(なお)す 蜂須賀光隆(はちすかみつたか)の時代(じだい)に 本堂(ほんどう)は再建(さいけん)されたと伝(つた)わる 一度(いちど)なくなった形(かたち)を 同(おな)じ形(かたち)には戻(もど)せなくても 受(う)け継(つ)ぎたい想(おも)いを 新(あたら)しい木(き)へ託(たく)して 【Left Side:Together】 やがて大日寺(だいにちじ)は 一宮神社(いちのみやじんじゃ)の別当寺(べっとうじ)となった 神(かみ)を祀(まつ)る場所(ばしょ)と 仏(ほとけ)を祀(まつ)る場所(ばしょ) 違(ちが)う名前(なまえ)を持(も)ちながら 同(おな)じ境内(けいだい)で時(とき)を重(かさ)ねる どちらか一方(いっぽう)を 選(えら)ぶのではなく 人々(ひとびと)は 両方(りょうほう)に手(て)を合(あ)わせた 江戸時代(えどじだい)には 一宮神社(いちのみやじんじゃ)が札所(ふだしょ)となり 遍路(へんろ)たちは そこで納経(のうきょう)したと記録(きろく)されている 境界線(きょうかいせん)のない 一(ひと)つの祈(いの)り 【Separation Order】 けれど時代(じだい)は 線(せん)を引(ひ)いた 神仏分離(しんぶつぶんり) ここからは神社(じんじゃ) ここからは寺(てら) 同(おな)じ場所(ばしょ)にあったものへ 別々(べつべつ)の名前(なまえ)を返(かえす) Voice Bright: 分(わ)かれることは 間違(まちが)いなの? 離(はな)れることは 失(うしな)うことなの? 答(こた)えを持(も)たないまま 道(みち)だけが間(あいだ)に残(のこ)った 【Road-Crossing Instrumental】 左(ひだり)から右(みぎ)へ スネアの音(おと)が渡(わた)る 信号(しんごう)が変(か)わる 車(くるま)の流(なが)れが止(と)まる ほんの短(みじか)い時間(じかん) 道(みち)の向(む)こうへ 【Right Side:Separation】 Voice Airy: 時代(じだい)が 境界線(きょうかいせん)を引(ひ)いた それでも空(そら)に 線(せん)は引(ひ)けなかった 雨(あめ)は寺(てら)にも 神社(じんじゃ)にも降(ふ)り 朝日(あさひ)は 二(ふた)つの屋根(やね)を照(て)らした 名前(なまえ)が分(わ)かれても 季節(きせつ)は分(わ)かれない 場所(ばしょ)が離(はな)れても 風(かぜ)は行(ゆ)き来(き)する 【Right Side:The Pilgrims】 かつて この側(がわ)が札所(ふだしょ)だった 白衣(びゃくえ) 金剛杖(こんごうづえ) 歩(ある)いてきた人(ひと)は 一宮(いちのみや)へ手(て)を合(あ)わせ 納経(のうきょう)を受(う)け 次(つぎ)の道(みち)へ進(すす)んだ 現在(げんざい)とは 違(ちが)う順序(じゅんじょ) けれど 祈(いの)った心(こころ)に 古(ふる)い、新(あたら)しいという 違(ちが)いはない 【Right Side:Eleven Faces】 一宮神社(いちのみやじんじゃ)の 本地仏(ほんじぶつ) 十一面観世音菩薩(じゅういちめんかんぜおんぼさつ) 十一(じゅういち)の顔(かお)は 一方向(いちほうこう)だけを見(み)ない 前(まえ)も 後(うし)ろも 喜(よろこ)びも 悲(かな)しみも 一人(ひとり)の中(なか)にある 違(ちが)う表情(ひょうじょう)を見守(みまも)る 神仏分離(しんぶつぶんり)の後(あと) 十一面観音(じゅういちめんかんのん)は 大日寺(だいにちじ)へ移(うつ)り 新(あたら)しい本尊(ほんぞん)となった もとの本尊(ほんぞん) 大日如来(だいにちにょらい)は 消(き)えたのではなく その傍(かたわ)らに残(のこ)った 【Right Side:Names】 本尊(ほんぞん)が変(か)わった 場所(ばしょ)も変(か)わった それでも寺(てら)の名前(なまえ)は 大日寺(だいにちじ) 最初(さいしょ)の光(ひかり)を 忘(わす)れたからではない 新(あたら)しい祈(いの)りを 迎(むか)え入(い)れたから 一(ひと)つを守(まも)ることと 一(ひと)つだけを守(まも)ることは違(ちが)う 残(のこ)すことと 変(か)わらないことも違(ちが)う 【Right Side:Shrine Now】 県道(けんどう)の向(む)こう 一宮神社(いちのみやじんじゃ)は 今日(きょう)もそこにある こちらから見(み)える距離(きょり) 声(こえ)を張(は)らなくても 気配(けはい)が届(とど)く距離(きょり) 一緒(いっしょ)だった時間(じかん)を 取り戻(もど)そうとはしない 別々(べつべつ)になった現在(いま)を 否定(ひてい)もしない ただ道(みち)を挟(はさ)み 互(たが)いの場所(ばしょ)に立(た)っている 【Counterpoint】 Voice Bright/Left: 寺(てら)は寺(てら)として 光(ひかり)を守(まも)る 大日如来(だいにちにょらい)と 十一面観音(じゅういちめんかんのん) 新(あたら)しい形(かたち)で 祈(いの)りを受(う)け継(つ)ぐ Voice Airy/Right: 神社(じんじゃ)は神社(じんじゃ)として 記憶(きおく)を守(まも)る かつて遍路(へんろ)が 手(て)を合(あ)わせた場所(ばしょ) 古(ふる)い時間(じかん)を 現在(いま)へ受(う)け渡(わた)す Voice Bright: 変(か)わったから 続(つづ)いたもの Voice Airy: 離(はな)れたから 見(み)えるもの Voice Bright: こちら側(がわ)から 灯(とも)す光(ひかり) Voice Airy: 向(む)こう側(がわ)から 返(かえ)す光(ひかり) Duo: 二(ふた)つの声(こえ) 二(ふた)つの場所(ばしょ) 二(ふた)つの名前(なまえ) 二(ふた)つの歴史(れきし) それでも空(そら)は ひとつにつながっている 【Mono Resolution】 離(はな)れることと 忘(わす)れることは同(おな)じじゃない 形(かたち)が変(か)わっても 受(う)け継(つ)げるものがある 大日寺(だいにちじ) 道(みち)を挟(はさ)んで ひとつの祈(いの)り 違(ちが)う場所(ばしょ)から 同(おな)じ空(そら)を見上(みあ)げる ここにある 向(む)こうにもある そして 私(わたし)の中(なか)にもある


