薄紅一片 指に乗せ 宵の帳へそっと放つ 水面にほどける篝火が 揺れては金の波を描く 鈴の音ひとつ 髪を撫で 遠く囃子が花を呼ぶ 白い指先 袖に隠して 今宵の夢へ参りましょう ひらり ひらり 花衣 くるり くるり 宵の舞 結んだ帯を翻し 千の灯りを渡りゆく 咲いて 咲いて 艶やかに 夜を染めゆく紅の花 鳴いておくれよ 篠の笛 胸の深くへ届くまで はらり はらりと舞い上がれ 散ることさえも美しく 刹那に宿る華ならば 惜しまず空へ咲き満ちよ 瑠璃の夜空に浮かぶ月 簪ひとつに閉じ込めて 金魚の尾鰭が翻れば 水面の星まで揺らめいた 狐の面から覗く瞳 誰とも知らず微笑んで すれ違う袖 残る香に 振り向く頃には人の波 しゃらり しゃらり 鈴鳴らし ゆらり ゆらり 影法師 紅差す頬を隠すように 扇ひとつを傾ける 咲いて 咲いて 艶やかに 夜を焦がせよ紅の花 響いておくれ 鉦の音 遠い夜明けを忘れるほど ひらり ひらりと舞い踊れ 儚いものほど鮮やかに 明ければ消える夢ならば 覚める間際まで美しく ひとつ ふたつと灯が消えて 藍から白へ空がほどける 名残を惜しむ暇もなく 最後の花が舞い上がる 咲いて 咲いて 艶やかに 暁染める紅の花 鳴いておくれよ 篠の笛 この一夜を惜しむように はらり はらりと散りながら 尚も華やぐ花吹雪 永久に咲かぬ華だから この一瞬を咲き誇れ