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オトノイロ

V6

オトノイロ 夜を湛えた水鏡へ ひとつの音が零れ落ちる まだ名前もなく まだ色も知らないまま 深縹の空を映して 眠る湖面を走る 音速の波紋が 星の輪郭を揺らす 幾重にも折れた月影 光は硝子のように散り 触れられない旋律が 瑠璃の水脈を描く 遠ざかるほど 鮮やかになる残響 夜の縁をなぞり 群青の彼方へ その行方を 星だけが見ている 静寂を経糸に 響きを緯糸に 見えない色を織りながら 夜の余白を染めてゆく 深縹に沈んだ旋律が 紫苑の余韻を纏って 同じ音は 同じ色では帰らない 記憶の襞に触れるたび 響きの輪郭が揺らぐ 瑠璃を宿した音には 知らない紫苑の影 白藍を纏う余韻には 淡い琥珀の気配 帰り路を辿る波紋へ 見覚えのない光が差す 声にならない影さえ 細い糸へ姿を変え 触れた記憶の温度が 残響の奥へ染みて 夜の織目を透かしながら 月白が静かに満ちる 瑠璃を渡った残響が 紫苑の影を連れてくる 白藍に触れた余韻には 淡い琥珀の温度 幾つもの記憶を纏って 波紋は岸辺へ辿り着く 同じ音は もう同じ色では帰らない 帰り着いた岸辺には 名もない光が揺れている 呼べば消えてしまいそうで ただ瞼の裏に映していた 月白を透かした朝に 淡金の光が差し込む 光の屈折が 乱反射して 夜を抱いた湖面には 無数の色が満ちてゆく 同じ音は 同じ色では帰らない 朝風に運ばれながら また誰かの色へ