[Verse 1] 古い台本を見つめ オーナーが笑った あの頃から ここへ来る者は 夢と迷いを 行ったり来たり 元の世界へ帰れば 立ち止まっては ここに戻ってくる だから私が 選んであげた 間違わない役と 迷わない未来を 女が告げた [Verse 2] 僕は舞台に残る ひとつに閉じられた 道を見つめる 右でも左でもない いくつもの景色が 幕の奥に眠っている 失った夢も 選ばなかった道も 正しいものを 決めることなく 重なった舞台を ひとつずつ あるべき形へ 戻していく [Chorus] 衣装を並べ 台本を置く 誰の手にも 押しつけない 王になりたい者は 冠を取ればいい 旅をやめたい者は 外套を置けばいい 何も選ばず 舞台を降りてもいい ここは誰かに 未来を与えられる 場所ではない 自分の世界へ 帰るための劇場 [Verse 3] ひとりが衣装を脱ぎ ひとりが名前を取り戻す 閉ざされていた はずの扉を 自分の手で開いていく そのたびに 特別席の女の 指先が透ける 次のひとりが帰れば 長い衣装の裾が 照明へ溶けていく それでも女は 舞台の中央で 帰っていく背中を 黙って見ていた 示した先に 帰れる道は 無くなってた 正しいはずの道が 開かない扉ばかりの 劇場を作り上げた 今 その世界が動き始める [Bridge] 最後に残った役者は 何も持たなかった 冠も 鎖も 台本も置いて 振り返ることなく 扉の向こうへ消えた その姿が見えなくなると 女の輪郭も 静かにほどける 声も影も 光の粒になり 誰もいない舞台へ 静かに溶けていった [Final Chorus] 照明が消え 幕は色を失い 豪華だった客席は 古い埃に覆われる そこに残ったのは 長いあいだ 忘れられていた 小さな廃屋の 劇場だけ 私は火を起こし 欠けたカップへ 二杯のコーヒーを注ぐ 二人で言葉もなく 最後まで飲み干した 空になったカップを 一度だけ コンと鳴らす [Outro] 出口は二つ どちらが誰のものか 確かめる必要はない 彼女は彼女の扉へ 僕は僕の扉へ 互いに 間違えることなく それぞれの夜へ 帰っていった