夜の底、散らかった机の上 青白い窓の明かりだけが、静かに呼吸をしている 磨きかけのガラス玉に映るのは 誰の目にもふれない、月の裏側の景色 重たいまぶたの裏側でだけ、鮮やかに羽ばたく蝶 はこの中で微睡む、目覚めをこばんだ夢たち 夜明けを待っているのか それとも、太陽を恐れているのか 踊れ、月の影で 喝采の届かない、この密室のステージで 誰の耳にも触れない旋律が、夜空の底で反響する はくじつのもとに晒されて、凡庸に溶けてしまうくらいなら この冷たい光の中で、ただ一人、瞬いていたい 太陽を仰ぐ花を、世界はこぞってめでるけれど 暗がりで零れ落ちた銀の砂も、確かに熱を帯びていた 引き出しの奥で、カチリと音を立てて 止まったままの時計の針が、夜を刻む 光を知らなければ、影の冷たさも知らずに済んだ 完璧な円を描く、水槽の中の軌道 いきつぎの仕方を忘れたまま 深い場所へと、ゆっくりと沈んでいく 踊れ、月の影で 喝采の届かない、この密室のステージで 誰の耳にも触れない旋律が、夜空の底で反響する はくじつのもとに晒されて、凡庸に溶けてしまうくらいなら この冷たい光の中で、ただ一人、美しく瞬いていたい 値踏みされることのない、永遠の夜を飼い慣らして 欠けては満ちる月灯りだけを食べて生きる 「見つけてほしい」と「隠していたい」の境界線で まぼろしは今日も、静かに透明度を増していく 踊れ、月の影で 名前のつかない引力に、身を委ねたまま 誰にも見つけられない秘密が、確かにここにあると 朝日に焼かれて消えるその瞬間まで この冷たい光の中で、ただ一人、誇り高く瞬いていたい おやすみ、色褪せないまぼろしよ 夜の海深く、息を潜めたまま 誰にも触れられない場所で