
同情こそ、あなたへの唯一の…
あなたが何なのか、 知ることはできないのだろう。 だから便宜上、神と呼ぶ。 なぜ私を、 こんなふうに作った。 笑い声のある世界に、 ただそこにいたかった。 どうでもいい話で、 笑うこともできたはずだ。 なのに私は、 先に深い闇を覗いてしまう。 見なくていいものまで、 いつも見てしまう。 これは私のせいなのか。 ほんとうに、私のせいか。 デカルトの悪霊が、 視界の端にいるなら、 この朝も、 たぶん作られたものだろう。 水槽に浮かぶ脳みそが、 見ている夢と同じだ。 ぼやけた感覚が、 何度も反復する。 醜いものだけ見せて、 美しいものは隠す。 そんなやり方で、 私は生かされてきたんだ。 神よ、 あなたもそうなんだろう? 呼んでも、 声は返らない。 でも、 聞こえているんだろ? 私が選んだつもりの方へ、 いつも先回りしているんだろう。 角を曲がる前から、 その先の出来事を知っていたみたいに。 いや違う。 あなたが決めているだけなんだろ。 あとから私だけが、 答え合わせをしている。 私が決めたことなんて、 何もないんだろ。 ラプラスの悪魔が、 眠っていないなら、 黙ったとしても、 それも書かれているのだろう。 戻れないと分かっているのに、 同じ場所から進めない。 そういう癖まで、 あなたの筋書きなのだろう。 選んだつもりで、 私は選ばされてきたんだ。 神よ、 あなたもそうなんだろう? 叫んでも、 何も返らない。 でも、 聞こえているんだろ? 私が守りたかったものを、 あなたは知っていたはずだ。 私が失いたくなかったものを、 あなたは分かってたのだろう。 悲劇にするには、 少し安直すぎないか。 なのに、 聞こえないふりをしたまま、 暗い陰の方へ、 少しずつ寄せていく。 これは私の運命なのか。 ちがうんだろう。 マクスウェルの悪魔みたいに、 悲しみだけを通しているなら、 私はもう、 何も信じられない。 残ってほしいものほどすり抜けて、 消えてほしいものほど手に残る。 そんな偏りまで、 何かの気まぐれなんだろう。 信じたつもりで、 私は惑わされてきたんだ。 神よ、 あなたもそうなんだろう? あなたが私の上にいるなら、 その上にも誰かいると感じないか。 私の言葉は、 口から出る前に整えられ、 言葉になる頃には あなたの意思を持っているのだろう。 それでも、 言わずにはいられない。 なぜ私を、 こんなふうに作った。 私がどれだけ、 足をばたつかせても、 たぶんあなたは、 少し指を動かすだけで事足りる。 ひとつだけ願いを聞き届けてくれるのなら、 「お前はもうこの世界には居ない」と書いてくれ。 神よ… あなたも… そうなんだろう?

