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夏の終わりに雨が降る(nameless)

坂道を下る 自転車の音 夕暮れだけが 先に帰った 昨日まで僕らが座っていた 階段に 知らない影がある コンビニの前で 立ち止まって どうでもいい話をしていた あの頃は 時間なんて いくらでもあると思ってた 季節が変わることなんて 誰だって知っていたはずなのに 終わりだけはいつも 終わってから 気づくものだった しと… しと… 夏の終わりに 雨が降る 僕らのいた街を 静かに濡らして しと… しと… 遠くなる あの日の声 振り返るたび 季節だけが先に行く 真っ赤な傘の向こう側 君がまだいるような気がした 夕立のあとの 濡れた歩道 意味もなく 遠回りした 駅までの道を 長くしたのは 帰る場所が 惜しかったから 駅前の時計は いつも通り 僕らを知らない顔で進んでいく 「また明日」と言った場所だけ 今も少し 時間が遅れている だいじだったものほど どうでもいい景色に戻ってくる あの日の笑い声が 知らない街で 急に聞こえた しと… しと… 夏の終わりに 雨が降る 言えなかった言葉を 隠すように しと… しと… 水溜まりに 空が揺れる 触れた指先から 季節が遠ざかる 戻れないから 綺麗なんじゃない 戻れないことが ただ寂しいだけ それでも僕は あの日の僕らを 忘れたくない もしも戻れるなら 最後の日じゃなくていい 何も知らずに くだらないことで笑っていた あの午後へ 戻ったところで きっと僕は 同じことをする 街は何も変わらない 僕だけが 少しだけ 遠くなった しと… しと… 夏の終わりに 雨が降る 僕らのいた場所を 静かに濡らして しと… しと… 遠ざかる あの日の声 振り返るたび 季節だけが先に行く 赤い傘が 遠ざかる 曲がり角の向こうへ消える さよならのトンネルを 抜けた先には 夏の匂いだけ 坂道を下る 自転車の音 昨日より少し 遠く聞こえる しと… しと… 夏の終わりに 僕はひとり 歩いていく