
私は バイクのアクセルを 回す 雨の日も 風の日も お客様に 笑顔とピザを 届けるの 鼻腔をくすぐる 芳醇な チーズの香り トマトソースと 絡んだ 食材たちの ハーモニー 熱い箱を 抱えて 町を 走るたび 思い出すのは あの日の 出来事 まだ ランドセルが 背中より 大きかったころ 小学校の 休み時間 友だちの ユイちゃんが 言ったわ ねえ ピザって 十回言って ユイちゃんは ニヤニヤ していた 知ってるわ 膝って 答えさせたいんじゃない 膝を ピザって 言わせたいんでしょ 音の残り香で 身体の名前を すり替える遊び そんな古い罠に 私が落ちると 思ったの? ピザ 一回目 すでに罠は 見えていた ピザ 二回目 ユイちゃんの浅さが 少し可愛く見えた ピザ 三回目 膝をピザって 言わせたいんでしょ ピザ 四回目 私は 意味で考える子だった 学習塾にも 通ってるんだから ピザ 五回目 音に引っ張られる子とは 違うの ピアノの楽譜だって 読めるの ピザ 六回目 膝なら膝 肘なら肘 交互に見せても 変わらない ピザ 七回目 世界はそんなに 簡単には曲がらない ユイちゃんに世界は 救うことができない ピザ 八回目 でも少しだけ チーズの匂いがした ピザ 九回目 脳の片隅を 配達バイクが走った ピザ 十回目 私は よだれを飲み込み 勝ったと 思った ユイちゃんは 目を輝かせて 言った じゃあ ここは? それは 膝ではなく 肘だった この子 詰めが甘いわ 膝じゃないなら なおさら 間違えない 勝ったと 思った ピジ

