Song Cover Image

波と木の葉

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ スタジオサプリ -特別編ー『渚の森』 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 海と森が交わる、小さな岬の村。 12歳の少女ユキは、誰にも見えない精霊たちと話せる力を持っていた。 ある夏。 森の奥で出会ったのは、水の精霊ナギ。 透明で、静かで、 触れようとすると、少しだけ揺れる存在。 ユキは、ナギと過ごす時間の中で、 はじめて「いなくなること」の気配に触れていく。 ナギは言う。 「森は終わらない。ただ、形が変わるだけ」 その言葉の意味を、 ユキはまだ知らなかった。 夏の終わり。 ナギは、何も告げず、 光の粒になって消えていった。 さよならも、言えないまま。 …。 ユキは、ひとりで海を見ている。 波は、何度砕けても、同じ岸へ帰ってくる。 木の葉は、風を選ばず、どこかに落ちる。 その繰り返しの中で、 ユキは、ようやく気づく。 ナギがいなくなったのではなく、 森そのものになったのだと。 朝霧の中。 ユキは、もう一度だけ名前を呼ぶ。 返事はない。 ただ、葉が揺れる。 それだけで、よかった。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 🌊『波と木の葉』🍃 朝霧の中に まだあなたの輪郭がある 名前を呼ぶたびに 少しずつ薄くなっていく それでも呼んでしまうのは 消えたくないのが 私の方だから 森は何も言わない ただ葉を揺らすだけ それが答えだと わかっていても 波は岸を忘れない 砕けた場所を覚えている また同じ場所へ帰ってくる あなたがいなくなった朝も 海だけは いつもと同じ顔をしていた 土の中で眠る種は 春を信じているわけじゃない ただそこにいるだけで 光の方へ向かってしまう 私もきっとそうだ 信じてるわけじゃないのに もう向いてしまってる 木の葉は風を選ばない どこへ運ばれても ちゃんと落ちる場所がある さよならって言えなかった それでよかったと 今はそう思ってる 消えるものだけが 本当に存在した証明だと 森だけが知っている 朝霧が晴れていく あなたの輪郭が 光に溶けていく それでも ここにいる