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遺物 01 《雨の夜の調律表》【Part 02】持ち込まれた空白のテープ

[Voice: Clear narration, smooth storytelling, no pause] 今夜お話しするのは、数日前に持ち込まれた、一本のカセットテープの記憶です。 依頼人は、三十代前半の晴香(はるか)さん。 彼女の亡き父親、佐々木創平さんは、かつてこの街で一番腕の良い、目の見えないピアノ調律師でした。 絶対音感を持ち、わずか一音叩いただけで、ピアノの狂いを正確に言い当てた職人です。 けれど彼が残したのは、音楽が一切録音されていない空白のテープでした。 濃いグレーのテープの背表紙には、古いラベルライターでたった四文字。 「440Hz」とだけ刻まれていました。 それはピアノの基準音であり、調律師が世界を測るための尺度です。