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我が名はゼノン

V5.5

古き町の 酒場の隅で 錆びたランプが 揺れていた 旅の歌人 弦を鳴らして 白き騎士らの 勝利を歌う 白き御旗は 悪を祓い 異端の城を 光で焼いた 祈りの剣は 国を救い 穢れし地を 清めたという 酒場の人は 盃あげて その歌に 笑い声を乗せる 誰も涙の 跡を知らず 誰も逃げた子らの 名前を知らない リュシアンはただ 壁際に立ち 古きマンドリンを 胸に抱いていた ゼノンの声が まだ耳の奥で 友よと 夜にほどけていた その歌は違う その名は違う 白き剣は 祈りを斬った その歌は違う その夜は違う 消えた名前が まだここにある 歌人はなお 高らかに言う 異端の枢機卿は 滅びたと 逃げた者らは 悪しき血筋 白き正義が 闇を断ったと リュシアンの指が 弦を握り 星の印が 涙で滲む 違うと言えば 殺されるだろう 黙ればまた 名前が死ぬ 友を失い 城を失い 王子の名さえ 闇に捨てた それでもまだ 捨てられぬもの ゼノンがくれた この弦がある 違う その歌は 名を奪う歌 その剣は 子らを追った剣 その旗は 祈りではない 血を吸い 白を装った影 枢機卿は 異端ではない 祈りを逃がした 人だった 母も子らも 悪ではない 明日を生きようと 逃げただけ 護衛の騎士は 最後まで立ち 名もなき命を 夜へ逃がした そしてゼノンは 僕の前で 刃を受けて 弦を託した その歌は違う その名は違う 白き剣は 祈りを斬った その歌は違う その夜は違う 消えた名前が まだここにある 酒場の声が ひとつずつ消え 誰かの盃が 床に触れた 旅の歌人は 弦を止めて 僕の名前を 静かに聞いた 我が名はゼノン 真実の歌い手 奪われし名に 声を返す者 我が名はゼノン 友より受けし名 偽りの歌に 弦を向ける者 白き剣よ 聞いておけ 亡きものにした 声は消えない 我が名はゼノン 真実の歌い手 この弦ひとつで 夜を開く 誰もまだ 信じていなくていい けれどこの歌は ここに残る これぞ 奪われし真実の 名を取り戻す 歌