ねぇ あの日のこと まだ覚えてる? 誰もいない帰り道 濡れた制服 傾いた空 言いかけたままの言葉が 喉の奥で腐っていく 名前を呼んだ 振り返らない もう一度呼んだ 今度は僕が 誰なのか分からなくなった ねぇ 君のいない場所は こんなに静かだったっけ 窓の向こうで 夏が剥がれていく 白い壁 古い匂い 触れたはずの手から 少しずつ 僕じゃなくなっていく 昨日まであったものが 今日はもう 知らない顔をしている それでも まだ温かい ねぇ あの日の僕に 何を言えばよかった? 答えはなくて 遠くで鳴いた声だけが 途中で途切れた 夕暮れ 誰かの足音 振り向かない 振り向けば また昨日に戻ってしまう ねぇ もし僕らが あの日のまま残っていたら こんなふうに 何も言わず 消えていけたかな 残された形だけが まだそこにあって 中身だけが 先にいなくなった そんな僕らを 夏の終わりに置いていく うつせみ