Song Cover Image

土曜の午後、奇跡のハンドパワーを見た!

+ Show full styles
V6

子供の頃 おれはいつも 鼻が詰まって苦しかった 鼻の奥の軟骨が狭いと 耳鼻科で言われた みっともねえし きたねえし 女子からはバイキン扱い 手術はまだ 子供だからダメ 背が伸びてから また来なさい 土曜の午後 学校帰り りっちゃん ブルと 三人で いつもの道を 歩いてた そんな道端 見慣れぬ看板 「奇跡のパワー!」 なんだこりゃ お祭りでもない ポン菓子でもない ひよこ売りでも もちろんない 駐車場には パイプ椅子 おじさん一人 座ってて 普通のおばさん 手をかざす 「肩が楽になった」 おじさん帰る ブルが叫んだ 「看板読んでみ!」 「どんな病気も 改善します!」 ガンが消えた アトピー治った りっちゃんが言った 「ケン坊 これチャンスじゃねえの?」 奇跡のハンドパワー おれの鼻も 治るかな ちょっと信じてみよう おばさんたちに聞いてみた 「すいません ボクもいいですか?」 「どこが悪いの?」 聞かれたけど 「あの……鼻が ちょっと……」 大人にしゃべるの苦手だ 「任せておきなさい」 「ラクにして 身を委ねるの」 「私たちはまだ 修行中だけど きっと良くなるわ」 期待しすぎて つい言った 「エスパーに会ったの 初めてです」 おばさん二人 大爆笑 ブルは腹がへったから帰った おばさんAが 後ろに立って 「ふん」と念を 込めている おばさんBが 聞いてきた 「ボク 暖かい波動を 感じるでしょう?」 「いや 全然感じません」 「おかしいな もう少し強く!」 今度はどう? と聞かれて 「やっぱり 全然感じないです」 奇跡のハンドパワー なんでおれには 効かないんだ おれが悪いのか? 効かない人もいるの? って聞いたら 「ハンドパワーに 不可能なし!」 AとBが 代わるがわる 十五分ごとに 交代してた オレはずっと 座ってた 五分 十分はあっという間 三十分 一時間 長かった 「波動を感じる?」 「特に何も 感じないです」 もうりっちゃんも帰ってた 信じれば効くんじゃないか 学研の本にも そう書いてあった おばさんたちを 信じよう ここからは 本気だぜ 二時間たって 尻が痛い 「波動は感じないけど お尻が痛いです」 「お尻の治療に 切り替える?」 って言われたけど 「いえ、鼻のほうをお願いします」 三時間たった 午後一時が四時 今さら帰れねえ 帰ってもやることねえし 四時間たった イベントは終わった そこへ背広の おじさん登場 おばさんたちが 口々に言った 「この子の鼻が手強くて」 「私たちのパワーじゃダメみたい」 「支部長のパワーでなんとかして!」 来た! さらに高レベルのエスパーだ 苦労が報われる そう思った 「ボク 鼻が悪いんだって? 詳しく教えてくれる?」 さすがハイレベルエスパーだ 言うことが違うぜ 医者に言われた鼻の軟骨 一生懸命 説明した おじさんは 変な顔をして 「我々のパワーでは まだ修行が足りない、ごめんね」 「おじさんなら治せるって おばさんたちは 言ってたよ?」 食い下がったけど 「もうイベントも終わりだから 早く帰りなさい」 パイプ椅子を片付ける 三人の大人を眺めていた ただ呆然と眺めてた 月曜日 学校で りっちゃんとブルに 話したら 「おめー 四時間も 粘ったのかよ!」 ムカつくほど笑われた 通学路だから 毎日通った だけどあの場所で あのイベントは 二度と開かれなかった もしかしたら またおれが 来るんじゃないかって 思われたのかも しれないな 土曜の午後 奇跡のハンドパワーを見た