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廻れ、時よ

STUDIO

鐘が鳴る まだ白い朝 妹の手が わたしの袖をつかむ 弟は眠そうに パンをかじっている 侍女が笑う 「今日は少し お休みください」 その声を わたしは 何度聞いただろう 銀の杯 封を切られた手紙 見覚えのない印章 夜更けの足音 昨日は味方だった人が 今日は目を逸らす 笑顔の裏を 探す癖だけが増えていく 誰を信じればいい 誰を疑えばいい それでも 小さな手だけは あたたかくて 一度目は 毒で終わった 次は バルコニーの下へ その次は 罪を着せられ 鐘の向こうで 刃が落ちた 次は 次は 次は 次は次は次次次… 違う道を選んでも 違う終わりだけが 追いかけてくる 廻れ 時よ もう一度 まだ 終われない あの子たちを 残したまま 終わるわけには いかない 廻れ 時よ もう一度 Ah―― 廻れ 時よ―― 侍女を疑った夜もあった 弟の泣き声さえ 罠に聞こえた 妹の笑顔にさえ 誰かの意図を探した もう誰も 信じないと決めた夜に 小さな指が わたしの手を握った 「お姉さま」 それだけで 崩れかけた何かが 少し戻った 侍女は何も知らず いつものように 髪を結い 温かい茶を置いた 「大丈夫ですよ」 その言葉に 幾たび救われただろう 今度こそ救えたと そう思った朝 背中に 冷たい刃 振り向く前に 床が近づく 誰だったのか 見えなかった ただ 遠ざかる意識の中で その香りを 確かに そして またあの鐘が鳴る Ah―― また また まだ―― まだだ―― 運命なら なぜ形を変えるの 偶然なら なぜわたしを待っているの 誰かが この結末を望んでいる 怖いのは私の痛みより あの子達の涙を 痛みを 晴らせないまま 次に目を覚ませないこと 痛みに泣いたあとでも あの小さな手を もう一度 握れるのなら 廻れ 時よ 何度でも この心が 擦り切れても なお 誰かの声で 立ち上がれるなら 優しい人達を 明日へ 廻れ 時よ まだ わたしは 誰かが 「おかえり」と言える朝を 守りたいだけ あの鐘が鳴る白い朝 わたしを呼ぶ小さな手と 侍女の声 「おはようございます」 だから―― 廻れ 時よ 次は この先へ