
果実みたいに甘い あなたから届く文字 指先ひとつで届くのに 触れられない夜ばかり 「顔だけ出してくるね」 そんな言葉を残したまま あなたはまた朝焼けを連れてくる 眠そうな絵文字 乱れた文章 昨晩の続きを探すように 目覚めたあなたから届く 長すぎる謝罪文 酔っていて送った記憶が無いと 困ったように笑うけど 「ごめんね」 そういうところだけ 妙にちゃんとしてる 理系だから小説なんて あまり読まないと思っていた だけどある夜 小説を読むって話になって 今も読んでいるところだと あなたは言った だから僕も 同じ本を読み始めた 同じページを開いたからって 同じ景色が見えるわけじゃないのに 香水の話をした夜も 誤変換で笑い転げたよるも どうでもいい話ばかり 積み上げてきたはずなのに 気付けばその隙間に 言葉にならないものが住み着いていた 写真は苦手なんだってね だから僕は知らない あなたが笑う瞬間も 酔って眠る横顔も いつかの後ろ姿しか知らない それなのに 知っているのは 文字になったあなたばかり 99%がお酒で出来ているような貴方が ときどき見せる1%の本音を 僕はただ受け取る シリアスな話になるたび 何か返せればいいのに 僕は聞くことしかできなくて それでも 聞いていたかった 酔ったあなたは笑いながら 不思議なことを言う 「抱きしめたいのに抱きしめたい」 哲学的な、まるで答えのない祈りみたいに 抱きしめたあとも 抱きしめたいのだと あなたは知っている 逢えることもない 触れられることもない いつか途切れるかもしれない 通知の向こう側 読みかけの小説だけが 少しずつ頁を失っていく それなのに 僕はまだ 果実みたいに甘いあなたに 静かに溺れている

