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翠の凶弾

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V5.5

翠の凶弾 春の陽射しが 暖かい 金曜日の 放課後 桜も終わり 緑の季節が 来ようとしていた 二つ上の 先輩 好きなバンドが 同じだった 惹かれ合うまでに 時間は かからなかった 卒業した彼は 今も時々 バイクで 迎えに来てくれる あたしは その後ろで 先輩の体温を 感じるのが 好きだった 少し 肌寒い風 だけど 背中越しのぬくもりが それ以上に 嬉しかった このまま どこまでも 行ける気がした そんな うららかな日 あれが 突然 彼を襲った カンッ 先輩の ヘルメットに 乾いた 衝撃音 次の瞬間 先輩の声が 変わった 気をつけろ やつがいる ぶううううん 信号で 止まった瞬間 春の光を 裂いて あいつが 現れた 翠の 凶弾 きらりと 太陽を跳ね返し まっすぐに こっちへ来る それは カナブン カンッ また 先輩のヘルメットを 撃ち抜いた やつは 止まらない 一度外れて 空へ逃げたように見えて すぐに 旋回した 狙いを つけ直している やつは 反射を追ってくる ヘルメットの 光だ 顔を下げろ あたしは 言われるままに 彼の背中へ 身を伏せた 胸が 鳴っていた 恋じゃない これは 生き残るための 鼓動だった 信号に行く手を 阻まれる くそっ 早く変われ 先輩が 低く呟く でも 羽音は 待ってくれない ぶううううん 近い さっきより ずっと近い やめろおぉぉ 先輩が 叫んだ 次の狙いは あたしの ヘルメットだった カナブン カナブン どうして 今なの どうして この春を 選んだの まだ 終わりたくない まだ 先輩と 行きたい場所がある まだ 一緒に 聴いていない曲がある まだ 二人の思い出を 作りたいのに こんなところで 終わりたくない おまえだけは 守る 先輩の声が 風を裂いた 信号が 青に変わる その瞬間 バイクは走り出した カナブンは 追ってくる 低く 重く まっすぐに 先輩 右から来ます 見えてる 伏せろ コンビニまで行けば 屋根がある 光を切れば やつは迷う 本当ですか 知らん でも 賭けるしかない その時 ぶううううん 羽音が もう一つ 重なった しまった 挟撃か 左に一匹 右に一匹 翠の凶弾が 二つ だが 二対二なら まだ勝算がある あたしは 一瞬で 理解した あたしも 戦力に 数えられている この走りに すべてを賭ける 先輩の声が 光を切った あたしは 彼の背中に しがみついた 生きたい この人と 生きたい コンビニの看板が 見えた 白い光 自動ドア 駐車場 あそこまで行けば 助かる 俺から 離れるな あたしは 強く頷いた バイクは 駐車場へ 滑り込んだ ブレーキの音 荒い息 遠ざかる 羽音 なんとか 巻いたな 先輩は ゆっくりと ヘルメットを脱いだ その肩に カナブン