
白い霧の中 ひとりでいた 道も名もない 花の野で 鳥の声だけが 遠く響き 風がわたしの 袖を揺らした ここはどこなの 夢なのかしら それとも長い 夜のあと 霧の向こうに あなたがいた あの日のままの 笑顔で あなたは何も 言わないまま ただ静かに 手を差し出す まるで昨日の 続きみたいに わたしの名を 待っていた あなたを失くした朝 わたしの春は 音もなく閉じた 夢を見ていたの わたしは現実を 生きてきたの それでもあなたは あの日の笑顔で わたしを見つめている あなたを乗せた 遠い船影 水平線で 白くほどけた 帰ると笑った その横顔を 波は静かに 連れていった 港の朝に 白い霧だけ あなたの代わりに 帰ってきた 届いた紙は 声を失くして わたしの指で 冷えていた まだあなたは 覚えていたの ほどけぬように 結んだ言葉を わたしだけが 朝を重ねて 遠い人に なったのに 薬指の 光がほどけ 長い日々が 霧へ帰る あなたは何も 言わないまま あの日の笑顔で 手を差し出す わたしはようやく 涙を知った 枯れていたはずの 心で 失くしたと思った 遠い約束が 霧の中で もう一度光る ねえ この手を取っていいの 遅すぎた 永遠へ いま この手を取って わたしは行く 花が揺れる 霧がひらく この手を取って わたしは行く

