冷たい鍵盤に指を沈めて 夜の底から這い上がる吐息 階段の影が首筋を撫でる 誰もいないはずなのに 十三番目の扉は 開いたまま、開いたまま 風ではない何かが 私の髪を梳いている 月が落ちる  ガラスのように砕けて この胸に銀の破片が刺さる 愛していたはずの顔が 腐りながら笑いかけてくる あぁまだ まだ足りないの 壁紙の下で脈打つ鼓動 誰かの誰かの 誰かのもの 指先から黒い糸が伸びて 私の心臓を縫い付ける 十三番目の鐘が鳴る 鳴り止まない  鳴り止まない 骨の隙間に月光が沁みて 体温が 奪われてゆく 月が落ちる  血のように赤く染めて この喉に銀の鎖が絡まる 許されていたはずの涙が 今はただの 毒になって落ちる もう 逃げられない 裂けろ この檻 受けろ この痛み 十三の階段 逆さに昇る 月は嘲笑いながら 私を 私を 突き落とす 月が燃える 黒く 黒く 燃え尽きるまで この声が枯れるまで 叫び続ける 愛も憎しみも  すべて灰になって それでも まだ あなたを あなたを 求めている ……階段は まだある 十三階で あなたは  待っている