
風が吹いた どこからか 甘い香りが 先に届く まだ咲かない花の 近くを通っただけで 風が少し 甘くなった 見上げてもまだ 見つからなくて 足を止めたら また香った 遠くにあるのに ここまで届く 見えないものを 追いかけて ひとつ曲がれば また風が吹く 知らない道を 歩いてゆく どこに咲いてる わからないまま 香りだけが 先にゆく 小さな花が 星みたいに 枝のあいだで 揺れている 風に触れるたび ふわり ふわり 秋が近くに なってゆく 朝の光に 透ける花と 昼の風に 揺れる枝 咲きそろう前の ほんの短い 香りが強くなる 時がある 誰かの家の 垣根越しに またひとつ 秋を見つけた 知らないうちに 季節は進み 昨日と違う 空の色 風が運んだ 甘い香りを 胸いっぱいに 吸い込んだ どこから来たの この香りは 振り返っても 風ばかり 小さな花が 星みたいに 足元へと 降りてくる ひとつ ふたつ 増えてゆけば 道の色まで 変わってゆく いつの間にか 花は散って 木の下だけが 明るくて 見上げていた その枝から 今度は下へ 季節が来た どこに咲いてた あの花たちは 風の向こうへ 消えたけど 歩くたびまた 甘い香り どこか遠くで 待っている 小さな星が 降り積もって 道の上に 秋を描く 気づかないまま 歩いていた その足元に 秋が降りていた 風が止んで 香りが薄れ オレンジ色の 花だけが 静かな道に 残っている

