
どうぞお入りください 散らかってますけどねェ 論文の山と 空のティーカップ 壁には骨格図 隙間に猫のポストカード 深い意味なんかないですよ たぶんねェ 白衣に白髪 緩めたネクタイ はじめまして 嘘ヶ崎です 名乗った先から信じるなと言う こんな男ですよ 困りましたねェ 紅茶をどうぞ 一口いかが 毒なんか入れませんよ それも嘘かもしれませんけど 嘘を纏った博士さ 笑顔の裏は明かさない どの言葉が本当か 僕にすら もうわからない 信じても 信じなくても どうせ君は気になるでしょう 光の中 立ち尽くす 嘘つきは もしかしたら いちばん正直な男かもしれない 論文 称号 学位の山 研究だけは 嘘じゃない 人のように笑う獣を見てきた その果てに何があったかは やめておきましょうか 過去なんてゲームみたいに笑い飛ばす 名前を出して すぐにはぐらかす 「作り話ですよ」 そう言いながら おかしいな 君の前では手が震える グラスチェーンを指で弄ぶ 気だるい笑みは崩さない 何でも聞いてくださいよ 嘘を纏った博士さ 笑顔の裏は明かさない どの言葉が本当か 僕にすら もうわからない 信じても 信じなくても どうせ君は気になるでしょう 光の中 立ち尽くす 嘘つきは もしかしたら いちばん正直な男かもしれない 好きですよ なんてねェ 冗談ですよ たぶんねェ 目を逸らして 笑って ほら また僕は逃げていく 本当のことを言えたなら こんな夜は来なかったのに 研究室は暗くなった 紅茶も冷めた 語れない章が この胸にまだある 行間からこぼれ落ちた 剥き出しの一言 飾れなかった それだけが怖かった 笑顔が消えた一瞬 見ましたか いいえ? よかった 何でもないですよ 嘘を空気みたいに吸って吐いて 止めたらどうなるか 考えないことにしてる 嘘を纏った博士だけど 今夜は少し 仮面がほどけた すべての言葉 すべての笑み この皮膚の下を 君は知らない 信じても 信じなくても 本当は 僕にも僕が見えない 光のない場所で迷う 嘘つきは もしかしたら いちばん孤独な正直者かもしれない これは 本当ですよ どれのことかは 言わないけど

