
茂みをかき分けかき分け 奥へ奥へと進んでゆく。 あたりはひっそり静まり返っている。 山鳥のさえずりさえ聞こえない。 草と木と土の匂い。 ひどい汗。 不意打ちのように茂みが途切れ 目の前に小さな沼が現われる。 ぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ なんだろう。 妙な音。 沼の対岸で水を飲む。 それは山猫。 ふと顔を上げ こちらを見る。 視線が合う。 その縦長の瞳。 すぐにつまらなそうに目をそらし 山猫は再び水を飲み始める。 ぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ 小さな舌が 水面に波紋を作る。 それは沼のこちら側まで広がる。 波紋は岸で終わらない。 だから僕の足が 柔らかな地面に沈んでゆく。

