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忍者ハヤテのうた

V6

闇に沈み 闇を斬る ハヤテよ 心を殺した 非情の男よ 明日の暁 拝むため 果てなき 旅を続ける者 ハヤテ ハヤテ 名もなき花を 踏み躙り ハヤテ ハヤテ 屍の山を 築き上げ どこへゆく 風と共に 死を招く ハヤテよ 自由のために 抗う男よ 明日の暁 拝むため ともがらの血で 手を染める者 ハヤテ ハヤテ 名もなき花を 踏み躙り ハヤテ ハヤテ 屍の山を 築き上げ どこへゆく −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ■原曲■ 作詞:Gemin大先生 タイトル案:『暁に溶かす影』 ​ 月明かりすら忌避して 黒装束に心を隠した 「私」はここにはいないと 冷たい夜風に言い聞かせて ​ 手裏剣の軌道は迷いなく けれど胸の奥、刃(やいば)が軋む 掟という鎖に繋がれて 流せない涙が、血を巡る ​ 影になれ、ただの影になれ 誰にも見付けられない暗闇で 音もなく叫んでるんだ 「生きてる」って、この痛みが証明だから 雨よ、どうか全てを洗い流して 夜が明ける前に、僕を消して ​ 印(いん)を結ぶ指先が震える 奪うことしか知らない両手で 守りたいものすら、触れられない そんな運命をただ呪いながら ​ もしも来世があるのなら ただの名もない花でいい 刃を握らない陽だまりで 君と笑ってたいだけなのに ​ 影に散れ、哀しい影に散れ 誰の記憶にも残らないまま 声もなく泣いてるんだ 「ごめんね」と、風にだけ預けて 煙玉の跡、幻のように 暁の空に、僕は溶けていく ​ ただの影として…… 音もなく…… 君の幸せだけを、祈って…… −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− ■忍者ハヤテのあらすじ■  山深い杣の集落に、ハヤテという少年がいた。  母はすでに亡く、炭を焼き、木を伐る父と二人で支え合う暮らし。  決して豊かではないものの、ハヤテにとって父と過ごす日々は、それだけで十分なものだった。  彼らが暮らす山は、杣たちが代々生活の糧としてきた入会地でもある。  一方、麓の百姓たちも薪や肥料を得るため山への立ち入りを求めており、庄屋を中心とする村方との間には、長年にわたって争いが続いていた。  その争いの中で、ハヤテの父が殺された。  しかし百姓たちが罪に問われることはなかった。役人にとっては、山間の貧しい者同士が起こした揉め事に過ぎないからだ。  父を奪われたハヤテは一人で山を下り、闇に紛れて庄屋の屋敷へ忍び込む。  そこで庄屋一家三人を手に掛け、ほどなく捕縛。  罪状として、死罪を言い渡されることになった。  しかし処刑の日を待つハヤテの前に現れたのは、藩の内情を探るため密かに入り込んでいた伊賀者――依那具の久兵衛だった。  誰にも気付かれず屋敷へ忍び込み、三人を殺してのけた少年の腕に目を付けた久兵衛は、奉行に掛け合い彼を引き取ると宣言する。  こうしてハヤテは処刑を免れ、故郷を離れて伊賀へと連れて行かれることになったのだ。  山で育ったハヤテは、忍びとして高い素質を示した。  だが、ハヤテは伊賀の本流に連なる者ではない。  外から拾われた彼に回されるのは、密告者の始末や口を割りそうな者の処分、主家への忠節を疑われた武士の暗殺といった、表には出せぬ仕事ばかり。  ある時には、謀反の疑いを掛けられた奉行の家を根切りにせよとの命が下り、彼は一族を一人残らず斬り捨てた。  そこに例外はなく、考えず、疑わず、命じられた者を殺す。  ハヤテがかつて庄屋一家を斬った時には、父を殺されたという自分なりの理由があった。  だが、伊賀に入ってからは名も知らぬ者を、何の恨みもないまま手に掛けるようになり、一つの任務が終われば次の任務に従うだけの日々が続く。  そうして幾年かが過ぎた頃、伊賀に一つの密命が下った。  ある地方の豪商が、豊臣家の御落胤を匿っているという。  徳川の世はすでに固まりつつあったが、豊臣の血が残っているという噂だけでも、将来の火種になり得る。  真偽を確かめ、事実であれば関わる者をすべて始末せよとの命を受けたハヤテは、商人に姿を変えて豪商の屋敷へ潜入した。  果たして、噂は事実だった。  しかし、そこで匿われていたのは天下を覆そうと兵を集める武将ではなく、自分が何者であるのかさえ満足に理解していない幼い子供。  屋敷の者たちを次々と斬り捨てたハヤテは、最後に一人の幼い少女と向かい合うこととなった。 「どうして?」  少女は逃げようともせず、泣きながらハヤテを見上げて、ただ一言だけ尋ねる。  ハヤテの喉から答えは出ない。  だが、腕は普段通りに刃を振り下ろした。  任務を終えたその夜、ハヤテは久兵衛と焚火を囲んでいた。 「豊臣の血など今となっては大した脅威ではないのかもしれぬ。  だが、家康公には自らの死後も徳川の世を盤石なものとして残す責務がある。  まだ幼い竹千代様が将軍となられた時、少しでも禍根となり得るものは消しておかねばならないのだ」  酒を口にした久兵衛の口振りは、これまで聞かされてきた話と何ら変わりなかった。 「そこでだ、ハヤテ。この任務の存在を知る者も、私を除いて残しておく必要はない」  ――どうして?  ただ、あの少女の声だけが頭の中に蘇る。  庄屋を殺した時なら、父を殺されたからだと答えられた。  伊賀の命を受けて人を殺した時にも、忍びだから、命令だからと理由を付けることはできた。  だが今、自分が殺される理由もまた、それらと何一つ変わらない。  徳川のため、天下のため、孫のため。  そうした言葉さえあれば、人一人の命など容易く消される。  あの少女も、奉行の家族も、父も、そして自分も、そこに違いなどなかった。 「さらばだ、ハヤテ」  久兵衛が刀へ手を伸ばした瞬間、ハヤテの手は即座に忍刀を引き抜き、斬り捨てた。  ハヤテは、久兵衛を憎んでいたわけではない。  ただ、自分が生き延びるためには斬るしかなかったのだ。  しかし、久兵衛を斬り捨てた以上、伊賀に戻る事など許されない。  忍びの掟に出奔は許されず、待っているのは追討だけ。  昨日まで同じ釜の飯を食った者たちが、これからは自分を殺しに来ることになる。  斬らなければ自分が死に、斬ればまた屍が増えていく。  それでも、もう誰かに命じられて人を殺し続けることだけは耐えられなかった。  故郷へは戻れず、父もいない。  伊賀にも居場所はなく、天下の行く末にも興味はない。  ただ、自分の生き方くらいは自分で決めたい。  それが自由と呼べるものなのか、ハヤテ自身にもまだ分からなかった。