
聖地である。 この日聖地はどんよりした曇り空だったが、ハロルド神殿から少し離れた空き地にて、スペードは神官達に稽古中だった。 この日空き地にやってきた者がいた。肩までの銀色の髪の青年である。見た目冷やかな印象を感じる顔立ちで、背は高く、結構良い体つきである。陽気な雰囲気はなく、どちらかというと影がありそうな雰囲気だった。服装は青系のシャツとズボン。青年は身長よりもはるかに長い槍に斧がひっついた武器、ハルバードを手に持っていた。 (妖精?) その男を見たスペードはそう思った。だが見たことはない妖精である。 「何かご用ですか?」 スペードは男に近づいて聞いてみた。 男の瞳は、左目は青空のような青で、右目は、黒に黄色い瞳孔だった。スペードはその目にねぼすけを思い浮かべていた。 「君、僕のお母さん好き?」 青年がそうスペードに聞いた。 「あなたのお母さん? どなたですか?」 「僕のお母さんは二人いて、一人は黒い髪で、耳が丸いよ」 「え?」 スペードはゆりを連想したが、ゆりにこんな大きな子供はいない。 「好きなの? どうなの?」 「好きですよ」 詳しく話してくれそうになかったので、スペードはとりあえずそう答えた。 「そう。じゃあ戦おう」 男はヴォルフである。ヴォルフはスペードに剣を投げていた。スペードが剣を受け取った。剣はずっしり重い。鞘を見るだけでわかった。 「神の国の剣じゃないですか?」 「うん。君達はもう帰って」 ヴォルフが他の神官達を見回して言うと、神官達はあわてて空き地の隅っこに移動していた。 「じゃあやろう」 ヴォルフが空き地の真ん中に移動した。 (何がなんやらさっぱりわからん) スペードの頭の中は「?」マークが並んでいたが、この男と戦ってみたいと思い、剣を鞘から抜いた。スペードも空き地の真ん中に移動した。 「じゃあ行くよ」 ヴォルフは槍を構えてスペードに突進した。 「はえええ!!」 「みえない!」 隅っこにいた神官戦士達が思わず声をあげた。一般人の目では捉えることができないほど、ヴォルフの動きは素早く、振り下ろしたハルバードをよけたスペードもびっくりしていた。 (戦い系の妖精だ!) ヴォルフは重い槍をまるで木の棒のように振り回している。ハルバードという武器は、槍のように相手を刺すこともできるし、斧のようにも使える武器だった。重い故にそれを扱うにはかなりの力が必要である。三度目の攻撃を避けたスペードは跳躍し、ヴォルフの後ろに回って剣を振るったが、ヴォルフは素早く後ろを向いてハルバードでそれを受け止めていた。 「あのーもし、嫌いって言ったらどうなったんですか?」 離れたスペードが聞いた。 「帰ったよ。だって、お母さんのことが嫌いなら、君が死のうがどうでもいいし」 ヴォルフは無表情である。が、どこか凄みがあった。妖精相手にはあまり感じたことはない凄みである。 「ってことは、これは稽古なんですね。あなたは俺に稽古をつけてくれてるんだ」 「ま、そうかな」 といいながら、ヴォルフは前に出てハルバードを振るっていた。普通の神官ならば、一発で即死間違いなしである。 「こええ」 「すげえ」 神官達は固唾をのんで見守っている。 一瞬でも気を抜いたら命がない、そんな戦いが目の前で繰り広げられていた。そしてそれから三時間ほど経ってようやくヴォルフはハルバードを立てた。 結局スペードはヴォルフを切りつけることはできなかった。そして、せっかくの剣はぼろぼろである。 「ありがとうございました」 ヴォルフが手を出したので、スペードは剣を返した。 「あの、あなたのお名前は?」 「ヴォルフ」 「ヴォルフ様?」 (確かハロルド様にそのような名前の妖精が産まれたとかなんとか) 「じゃあさよなら」 ヴォルフは剣を鞘にしまい、武器を持ったまま消えた。 ヴォルフは重い槍をまるで木の棒のように振り回している。三度目の攻撃を避けたスペードは跳躍し、ヴォルフの後ろに回って剣を振るったが、ヴォルフは素早く後ろを向いてハルバードでそれを受け止めていた。 「あのーもし、嫌いって言ったらどうなったんですか?」 離れたスペードが聞いた。 「帰ったよ。だって、お母さんのことが嫌いなら、君が死のうがどうでもいいし」 「ってことは、これは稽古なんですね。あなたは俺に稽古をつけてくれてるんだ」 「ま、そうかな」 といいながら、ヴォルフは前に出てハルバードを振るっていた。一瞬でも気を抜いたら命がない、そんな戦いが目の前で繰り広げられていた。それから三時間ほど経ってようやくヴォルフはハルバードを立てた。 結局スペードはヴォルフを切りつけることはできなかった。そして、せっかくの剣はぼろぼろである。 「ありがとうございました」 ヴォルフが手を出したので、スペードは剣を返した。 「あの、あなたのお名前は?」 「ヴォルフ」 「ヴォルフ様?」 「じゃあさよなら」 ヴォルフは剣を鞘にしまい、武器を持ったまま消えた。

