朝まだき 名もない光が 水面の縁に降りた 小さな一滴は 青をひとつ抱いて 静かな世界へ落ちてゆく 触れた場所から 円がひらき また円が生まれ 遠く 遠く 知らない岸まで やさしい揺らぎを運んでゆく ひとつの音が 空へ昇れば 雲の隙間で 光がほどけ 白い鳥たちが 風を追い越してゆく 今日という空に 新しい青が増えたことを 誰も知らない花まで そっと揺れて 祝っているようだった 流れる雲よ その歩みを遮らず 吹く風よ その羽を軽くして まだ見ぬ景色へ 高く 遠く その響きが 届いてゆきますように 一滴だった波紋は いつしか幾重にも重なって 誰かの水面に 小さな光を置いてゆく 響きは響きを呼び 色は色を連れて 昨日より広い空へ 道を描いてゆく 急がなくていい 雨の日には 雫の音を聞いて 風のない夜には 月を映して 朝にはまた 澄んだ青を抱けばいい 穏やかな水面が 長く続くように あたたかな陽が その肩を照らすように 季節をいくつ越えても その響きが濁らぬように 今日 空から落ちた光が 明日には もっと遠い場所で 誰かの胸に 波紋を描いている そんな未来を 青空は何も言わず どこまでも どこまでも 明るく広げていた