浴衣の袖を よかぜが揺らす 藍色の空に 花火が滲む 名前を呼べば 泡になって 指の隙間を すり抜けてゆく 硝子の水槽 街を映して 赤い尾ひれが 夢をほどいた 「さよなら」だけが 綺麗すぎて 笑った顔まで 遠くなる 薄明かり 軋む電車 夏の匂い 濡れた髪 帰れない 帰らない 心だけが 泳いでる 触れたら壊れそうな 沈黙を抱いて 透明な夜へ 落ちてゆく 金魚 金魚 赤く燃えて 水の中で 月を飲んだ ゆらり ゆらり 君の影が 胸の奥で 尾を揺らした 消えそうで 綺麗だった 夏のままで 泳いでいた 嗚呼 藍の水面 嗚呼 夢の途中 茜さす空 遠ざかって 林檎飴さえ 色を失くす 「大丈夫」って 嘘を浮かべ 掬えば波紋に 変わってく 荒い息 曇る瞳 指で描く 小さな傷 眠れない 眠らない 朝焼けまで 漂ってる 触れればほどけそうな 記憶を抱いて 透明な愛へ 沈んでく 金魚 金魚 紅を引いて 夜の底で 光になった ひらり ひらり 君の声が 水彩みたいに 滲んでいく 届かない それでいい 綺麗なまま 泳いでいて 水槽の中の宇宙 逆さまの星祭り 指先で掬った夏は もう 二度と戻れない 金魚 金魚 赤く燃えて 涙の中 月を隠した ゆらり ゆらり 君の影は 今も静かに 揺れている 消えそうで 愛しかった 夏のままで 泳いでいた