
📖 歌詞はサイドストーリーの後に記載しています。 🎧 Japanese lyrics are written after the side story. 🌌🕯️🗺️🌅 ──────────── 🎬 群青の誓いと白銀の刃 第6話『見えない道筋』 登場人物: 🌌 ノエリス ヴァルモント家へ迎えられた、過去を失った少女。 自分が何者だったのかはまだ分からない。 けれど、人の視線や動きだけでなく、その間に残る「道筋」を読む知識まで、身体の奥に残されていることに気づき始める。 🕯️ オーレリア・ヴァルモント ヴァルモント家の令嬢。 ノエリスが思い出した「方法」と、その過去で何をしていたのかを安易に結びつけず、分からないことは分からないまま受け止める。 そして、ノエリスが何かの役に立つことではなく、ただ明日もそこにいることを大切に思っている。 🏛️ エドガルド・ヴァルモント ヴァルモント家の現当主であり、オーレリアの父。 ノエリスの感覚を否定せず、それでも「見えたもの」と「証明できたもの」を分けて考える。 屋敷の誰かを疑うより先に、外から何を知ることができるのかを確かめようとする。 ──────────── 📖より詳しい描写や会話を含む完全版は、カクヨムで公開しています。 この物語をもう少しゆっくり辿っていただけたら嬉しいです。 https://kakuyomu.jp/works/2912051599757211144/episodes/2912051606121090957 🎬 群青の誓いと白銀の刃 過去作をプレイリストにまとめました👇 https://suno.com/playlist/9f5ff17d-70d9-4099-8eb1-c370ef57c5da ──────────── 【サイドストーリー】 第6話「見えない道筋」 宿場町から戻った翌朝。 ノエリスは、ほとんど眠れていなかった。 部屋の隅には、古びた布に包まれた細長い荷がある。 昨日。 男たちの視線を追った時に蘇った、知らない声。 ――同じ目で追うな。 ――見られたと思ったら、次へ渡せ。 ――継ぎ目を探せ。 そして、包みを見た時に聞こえた言葉。 ――離すな。 自分は何を知っているのか。 何を忘れているのか。 答えは、まだなかった。 朝の廊下でオーレリアと出会う。 【オーレリア】「……眠れた?」 【ノエリス】「はい」 一度答えてから、小さく言い直す。 【ノエリス】「……あまり」 【オーレリア】「今日は休んでもいいのよ」 【ノエリス】「大丈夫です。いつも通り、仕事をさせてください」 何かをしていた方が落ち着く。 けれど、それだけなのか。 何もできなければ、自分がここにいる理由までなくなってしまうような気がしているのか。 ノエリス自身にも分からなかった。 【オーレリア】「分かった。でも、無理をしていると思ったら私が止めるから」 少し笑って続ける。 【オーレリア】「それは約束して」 【ノエリス】「……はい」 その頃、昨日の出来事について調査が始まっていた。 街道を塞いだ荷車。 所有者。 積荷。 運び手。 一つずつ確認されていく。 だが、どこにも明らかな不正は見つからない。 荷車は正規のもの。 積荷も普通の日用品。 運び手にも正式な記録がある。 車輪の傷も、石へ乗り上げたとして不自然ではなかった。 荷崩れが意図的だったと証明できるものは、何一つなかった。 ノエリスが見た男たちについても同じだった。 名前がある。 そこにいた理由もある。 それぞれの記録だけを見れば、何もおかしくない。 【ノエリス】「……あの人たちが、本当に一緒だったかどうかも証明できないのですね」 【エドガルド】「今のところはな」 【ノエリス】「私には、そう見えました」 【エドガルド】「それは記録してある」 エドガルドは、まっすぐノエリスを見る。 【エドガルド】「お前の見たものを否定しているわけではない。ただ、見えたものと、証明できたものは分ける」 その言葉に、ノエリスは少しだけ安心した。 信じてもらえていないわけではない。 同時に、自分の感覚だけで誰かが罪に問われることもない。 オーレリアが地図を見る。 【オーレリア】「でも、もし昨日のことが偶然ではなかったとしたら……どうして私たちがあの街道を通ると分かったのでしょう」 昨日の予定を知っていた者は少ない。 けれどエドガルドは、すぐに屋敷の誰かを疑おうとはしなかった。 【エドガルド】「考える順番が逆だ」 【オーレリア】「逆?」 【エドガルド】「誰が話したかではない。誰も何も話さなくても、外から何が見えるのかを先に確かめる」 その瞬間。 ノエリスの中で、何かが繋がった。 宿場町へ着けば、オーレリアの姿は多くの人に見られる。 一人が見つける。 その先を、別の誰かが見る。 さらに、その続きを別の誰かが見る。 同じ人間が、ずっと後をつける必要はない。 【ノエリス】「……一人で、ずっと見ている必要はありません」 オーレリアの表情が変わる。 昨日見た男たちは、全員違う人物だった。 だから、一人の人間に尾行されているようには見えなかった。 【オーレリア】「視線を……次の人へ渡していた可能性がある?」 ノエリスは答えなかった。 考えて分かったのではない。 身体のどこかが、それを知っていた。 午後。 昨日の行程を地図の上で辿っていく。 宿場町。 市場。 街道。 荷車。 ノエリスは、人から人へではなく。 場所から場所へ線を引いていく。 その間にあるもの。 継ぎ目。 また、知らない声が聞こえた。 ――人を追うな。 ――人は消える。道を追え。 ――誰も秘密を話していなくても、人が動けば跡は残る。 ノエリスの手から鉛筆が落ちた。 【オーレリア】「ノエリス!」 【ノエリス】「また……声がしました」 自分には、なぜこんなことが分かるのか。 その恐れが、別の形を持ち始める。 【ノエリス】「……私、こういうことをしていたのでしょうか」 人に気づかれないように見て。 誰かへ伝えて。 誰かを追って。 オーレリアは、すぐに答えた。 【オーレリア】「まだ分からない」 【ノエリス】「……」 【オーレリア】「あなたが今思い出したのは、方法だけでしょう?」 【ノエリス】「……はい」 【オーレリア】「誰を見ていたのかも?」 【ノエリス】「分かりません」 【オーレリア】「何のためだったのかも?」 【ノエリス】「……分かりません」 【オーレリア】「なら、今はそこまで」 分からないことを、分かったことにしない。 その頃。 屋敷から離れた場所では、男たちもノエリスについて調べ始めていた。 名前は分かった。 ノエリス。 ヴァルモント家の使用人。 令嬢の近くにいる女。 だが、それ以前が分からない。 出身も。 家族も。 以前の奉公先も。 何も辿れない。 ただ一つ。 【男】「あれは、偶然ではない」 【男】「こちらの動きを知っていた?」 【男】「違う。やり方を知っていた」 【男】「何の」 【男】「視線を渡すやり方と――その継ぎ目を見抜くやり方だ」 夕方。 調査を続けても、まだ証明できるものはなかった。 それでも、一つの可能性は見えてきた。 予定が事前に漏れていなくても。 宿場町で姿を確認し、いくつもの視線で行き先を繋げば、昨日の出来事は成立する。 エドガルドは報告を読み終える。 【エドガルド】「これなら、昨日の出来事が成立する可能性はある」 【オーレリア】「ただし、証明はできない」 【エドガルド】「ああ。なら、今分かっているのはそこまでだ」 そして、まだ調べようとするノエリスへ告げる。 【エドガルド】「今日の調査はここまでにしろ」 【ノエリス】「ですが、もう少し……」 【エドガルド】「明日がある」 その夜。 小書斎には、まだ灯りがついていた。 机に向かっていたのはノエリスだった。 【オーレリア】「父上、今日は終わりって言っていたでしょう」 【ノエリス】「……もう少しだけです」 【オーレリア】「何を探しているの?」 【ノエリス】「分かりません」 けれど、もう少し思い出せれば。 もっと分かれば。 もっと役に立てれば。 そこまで口にして、ノエリスの言葉が止まる。 【ノエリス】「何も分からないままで、何もできないままで……それでも、ここにいていいのか」 少し迷う。 【ノエリス】「時々、分からなくなります」 言ったことを後悔して、目を伏せる。 【ノエリス】「……忘れてください」 【オーレリア】「嫌」 ノエリスが顔を上げる。 【オーレリア】「聞いちゃったもの。だから、忘れない」 そして、いつもの明日の予定を話すように続けた。 【オーレリア】「明日の朝になったら、ちゃんと朝食を食べるの。それから、いつも通り仕事をして、お茶を淹れて。私が話しかけたら、返事をして」 【ノエリス】「……それだけで、いいのですか」 オーレリアは不思議そうに首を傾げる。 【オーレリア】「それだけじゃないでしょう?」 【ノエリス】「……?」 【オーレリア】「朝になったら、あなたがいる」 ノエリスの瞳が揺れる。 【オーレリア】「私が話しかけたら、あなたが返事をしてくれる。今日の話の続きを、明日もできる」 やわらかく笑う。 【オーレリア】「それって、ちゃんと大事なことでしょう?」 役に立てるからでもない。 何かを知っているからでもない。 誰かを守れるからでもない。 ただ、明日もそこにいること。 【ノエリス】「……明日も、お茶をお持ちします」 【オーレリア】「待ってる」 その一言が、胸の奥へ静かに落ちた。 誰かが、明日の自分を待っている。 二人は小書斎の灯りを消し、並んで廊下を歩いた。 その頃。 屋敷から遠く離れた場所では、男たちが次の手を考えていた。 【男】「令嬢へ近づけば、あの女が見る」 【男】「なら、見えない場所を作ればいい」 【男】「どうやって」 二つの印が、別々の方向へ動かされる。 【男】「一緒にいなければいい」 夜。 ノエリスの部屋には、まだ古びた布に包まれた細長い荷がある。 過去へ続く道は、まだ見えない。 自分が何者だったのか。 なぜ、こんな方法を知っているのか。 何のために覚えたのか。 何も分からない。 けれど。 明日のことだけは、一つ分かった。 朝になれば食堂へ行く。 オーレリアへお茶を運ぶ。 名前を呼ばれたら、返事をする。 明日の中にも、自分がいる。 知らない過去へ続く道は、まだ暗い。 こちらを見ている者たちへ続く道も、まだ見えない。 それでも。 ここから明日へ続く小さな道だけは。 今夜、確かに見えていた。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体・出来事とは関係ありません。 🌌🕯️🌅 ──────────── 眠れない夜の向こうで 答えばかり探していた できないことを数えるたび 自分の場所が遠くなる まだ何も分からなくていい 無理に強くならなくていい 名前を呼べば振り向くこと それもちゃんと大事だから 明日の中に あなたがいる それだけで少しあたたかい 答えはまだ見えなくても また朝になれば ここで 見えない道のその先を 急いで決めなくてもいい 立ち止まってしまう夜にも 消えないものはきっとある 明日の中に あなたがいる それだけで少しあたたかい 名前を呼べば返る声を また朝になれば ここで 強くなくても 笑えなくても そのままの声を聞かせて 理由なんてなくてもいい 私はここで待っている 明日の中に あなたがいる それだけでちゃんと嬉しい 今日の続きを抱えながら また朝になれば ここで 明日もきっと ここで

