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❖ できない、あらゆる点で ❖ 〜Perfectly, in Every Way〜

V5.5

[Chorus] なにひとつ 積んでない 手のひら ひらいて 見せて そのまま 立ってる できない できない できない 言い切ったら 口が すこし ゆるんだ [Verse 1] だれより 早く 着いた 席で きのうの じぶんの 字を なぞる 「できます」が ならんでる 知らない ひとの 手つきで [Pre-Chorus] 入る まえに 顔を つくる うなずく 場所は おぼえてる 中身は 通り過ぎていく うすい 膜の むこう [Chorus 2] なにひとつ 積んでない 手のひら ひらいて 見せて そのまま 立ってる できない できない できない (in every way, and perfectly) 言って みたら 部屋が すこし 空いた [Verse 2] 詰まった 紙を ひらいた ところで 手が 止まって そのまま になる しゃがんだ 姿勢の まま たちあがる 理由を さがしてる [Bridge] さがすのを やめた やめても なにも 起きない 起きないことが すこし おかしい うずくまって 笑ってる [Final Chorus] なにひとつ 積んでない 手のひら 名札を はずして ポケットに 落とす できない できない できない (in every way, and perfectly) はずした ところが 軽い [Outro] できない 🎼世界観散文 朝いちばんにフロアへ着いて、まだ誰も来ていない席で背筋を伸ばす。手帳を開いて、昨日書いた「できます」を数える。数えているうちに、その字がだんだん他人の書いたものに見えてくる。 会議室のドアの前で、口角を上げる練習をひとつだけする。上がったのを確かめてから入る。相槌を打つ場所はもう覚えている。覚えているだけで、中身はひとつも入ってこない。 昼過ぎ、コピー機の紙が詰まった。しゃがんで扉を開けたところで手が止まる。立ち上がる理由がどこにも見つからなくて、そのまましゃがんでいた。誰かが通り過ぎて、戻ってきて、また行った。 夕方、名札を外してポケットに落とす。外したところだけが軽い。エレベーターの扉にうすく自分が映って、口角の上がっていない顔が思ったより悪くなかった。 📗参考文 ✎フランツ・カフカ 「ぼくは人生に必要な能力を、なにひとつ備えておらず、ただ人間的な弱みしか持っていない。」 「無能、あらゆる点で、しかも完璧に。」 📝作詞メモ(鵜飼ルカ) 視点の置き方:一般視点。主語を一度も置かず、手・口・姿勢という体の部位だけで人を示した。名乗った時点で言い訳になる曲なので、名乗らせない この曲で意図的に避けた語:「弱さ」「無能」「だめ」。テーマの単語を歌詞に一度も出していない。直喩を使わない名義なので、紙・名札・膜は説明せずに並べただけで置いた サビ頭に選んだ一行と、その理由:「なにひとつ 積んでない 手のひら」。空であることを先に見せてから「ひらいて 見せて」と続けると、無いものを提示する能動的な動作になる。嘆きにならない ── Rory M Studio ── Produced by 彩瀬 AYER Co-produced by 剣持 キリ / C.OSMIQ Arranged by 氷見 冬花 Sound Design by 苅田 トキ Instruments by 梁 インファ(Erhu) Lyrics by 鵜飼 ルカ Vocal by 夏川 ひなた