
First of all— Nine-oh-five, she clicks her pen Three neat boxes, one crooked arrow “First of all, what’s the actual issue?” It’s line two on the agenda “That said—” she wipes it clean The marker squeals; nobody looks up I write it down like it might matter She checks my page, then caps the pen There’s a film on the coffee by ten She calls the silence “a reset” “Let’s circle back”—she circles the date Same four names, no owner yet First of all! (First of all!) That said! (That said!) Box the mess and move the arrow Call it progress, call it strategy First of all! That said! New heading, same old task Three neat boxes, one loose end Let’s take it offline again At lunch her face is on a banner WOMEN WHO LEAD in glossy blue “They made me look expensive.” She shows me the proof: “Expensive, right?” When Mark talks over me She says, “She wasn't finished.” At four-thirty, my deck comes back Every page in red Half her sandwich beside it “You skipped lunch. Slide six is wrong.” She’s gone before I can say thanks I eat the corner of the bread There’s a film on the coffee again She calls the silence “a reset” “Let’s circle back”—she circles the date Same four names, no owner yet First of all! (First of all!) That said! (That said!) Box the mess and move the arrow Call it progress, call it strategy First of all! That said! New heading, same old task Three neat boxes, one loose end Let’s take it offline again She drops the marker in my hand “You’re chairing. I’ve got a call.” Twelve faces turn. I draw three boxes The arrow comes out just like hers “First of all, the actual—” First of all! (First of all!) That said! (That said!) Box the mess and move the arrow Call it progress, call it strategy First of all! That said! New heading, same old task Three neat boxes, one loose end I’ll take it offline again First of all— That said— Oh, for fuck’s sake. ---------------------------------------------------- (三つの小綺麗な箱) 先輩の口癖から、すべては始まる―― 「まず、大前提として」 朝9時5分 先輩がパチンとボールペンをノックする ホワイトボードに手際よく描かれるのは 小綺麗な3つの四角と1本の歪んだ矢印 「まず大前提として、本当の論点は何?」と先輩が言う そんなの配られたアジェンダの2行目に書いてあるのに 「とはいえ――」と言いながら 先輩はさっさと文字を消してしまう マーカーがキュッと甲高い音を立てても 会議室の誰も顔を上げない 私はといえば いかにも意味があるふりをして 手帳にメモを取る 先輩は私の手元をチラリと確認してから 満足そうにキャップをはめた 10時になる頃には マグカップのコーヒーに薄い膜が 張っている 誰も喋らなくなると 先輩はその気まずい沈黙を 「いいリセットね」と言い換える 「じゃあ、この件はまた改めて 持ち帰りましょう」とカレンダーの 日付に丸をつけるけれど 並んでいるのは いつもと同じ4人の名前 要するに誰も自分の仕事に したくないのだ 「まずは大前提!」 「とはいえね!」 散らかった面倒ごとを 適当に四角で囲って 矢印を引っ張れば一丁あがり それを「進捗」と呼び 「戦略」と呼ぶのが このオフィスのルール 「まずは大前提!」「とはいえね!」 見出しの言葉を変えただけで 中身はいつもの使い回し 小綺麗な3つの箱と 宙ぶらりんの宿題がひとつ 「あとは個別にやりましょう」って また先送りだ お昼休み オフィスのロビーに社内報の 巨大なバナーが下がっていた ツヤツヤした青い文字で 「時代をリードする女性たち」 そこに写る自分のキメ顔を指さして 先輩が私に言った 「見て、ずいぶんデキる女風に 撮ってくれたと思わない?」 校正用の画面をわざわざ見せて 「ね、一流っぽいでしょ?」 と自慢してくる まったくこの人は けれど午後の会議で同僚のマークが 私の発言を偉そうに遮ったとき 「ちょっと待って、 彼女はまだ話し終わってないわよ」と 冷たく一喝してくれたのも先輩だった 夕方4時半 提出した私の企画書が戻ってくる 見事にどのページも真っ赤っか その横に食べかけのサンドイッチが半分 「お昼抜いたでしょ。 それとスライドの6枚目、やり直し」 お礼を言う間もなく 先輩はヒールを鳴らして去ってしまい 私は悔しいやらありがたいやらで パンの端っこをかじるのだ マグカップのコーヒーに薄い膜が また張っている 誰も喋らなくなると 先輩はその気まずい沈黙を 「いいリセットね」と言い換える 「じゃあ、この件はまた改めて 持ち帰りましょう」とカレンダーの 日付に丸をつけるけれど 並んでいるのはいつもと同じ4人の名前 誰も自分の仕事にしたがらない 「まずは大前提!」 「とはいえね!」 散らかった面倒ごとを 適当に四角で囲って 矢印を引っ張れば一丁あがり それを「進捗」と呼び 「戦略」と呼ぶのが このオフィスのルール 「まずは大前提!」「とはいえね!」 見出しの言葉を変えただけで 中身はいつもの使い回し 小綺麗な3つの箱と 宙ぶらりんの宿題がひとつ 「あとは個別にやりましょう」って また先送りだ 突然、先輩が私の手のひらに マーカーを押しつけてきた 「あと仕切っておいて。 一本、電話入っちゃったから」 12人の視線が一斉に私へ突き刺さる 私はホワイトボードの前に立ち 息を止めて3つの四角を描く 引っ張った矢印の歪み方が 気味の悪いほど先輩の線に そっくりだった そして、私の喉から勝手に あのみっともない口癖が飛び出す―― 「まず、大前提として、本当の――」 「まずは大前提!」 「とはいえね!」 散らかった面倒ごとを 適当に四角で囲って 矢印を引っ張れば一丁あがり。 それを「進捗」と呼び 「戦略」と呼ぶのがオフィスの流儀 「まずは大前提!」「とはいえね!」 タイトルを新しくしただけの お馴染みの泥沼 小綺麗な3つの箱と 片付かない宿題がひとつ ……わかりましたよ あとは私が引き取って片付けます! 「まず大前提として――」 「とはいえ――」 ……ああもう、やってられない
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