
静かなる始まり 天地の前に 名もなきもの 深く澄み渡り 耳に届かず 目にも見えず ただ在るだけの 永遠の源(みなもと) 道(みち)は無(む)にして 有(ゆう)を生(う)み 有(ゆう)はまた 万物(ばんぶつ)を抱(いだ)く 車(くるま)の軸(じく)の穴(あな) 土器(どき)の空洞(くうどう) 見えぬ空(くう)こそ 形(かたち)を成(な)す 人よ 知恵を飾るな 欲望に囚(とら)われるな 自然のままに ただ還(かえ)れ 道(みち)は汝(なんじ)を抱(だ)きしめる --- 孔子(こうし)の「仁(じん)」を越(こ)えて 墨子(ぼくし)の「賢(けん)」を退(しりぞ)けて 老子(ろうし)は語る 声なき声で 「大(だい)と曰(い)う、無限(むげん)の道(みち)」 徳(とく)は二つ 影のように 道(みち)を生かす力 そして 人が作る虚(うつ)ろな掟(おきて) その差を 見極めよ 礼(れい)は衰(おとろ)えの始(はじ)まり 義(ぎ)は争(あらそ)いを呼(よ)ぶ 真心(まごころ)を失(うしな)えば 人は道(みち)から離(はな)れる --- おのずから然(しか)り 風が吹くように 水が流れるように 生きよ 為(な)さずして為(な)す 無為自然(むいしぜん)の調(しら)べ --- 大国(たいこく)を治(おさ)めるは 小魚(こざかな)を煮(に)るごとし 乱(みだ)してはならぬ 余計(よけい)に触(ふ)れるな 静けさのうちに 人は安らぎ 欲を捨てて ただ笑う 互(たが)いの名を知りても 訪(おとず)れることはない 小さき村で 共(とも)に老(お)い 星の光を仰(あお)ぎ見る --- 道(みち)は無(む) しかし全(すべ)て 闇(やみ)に溶(と)け 光(ひかり)を生(う)む 虚(うつ)ろの中に 形(かたち)は満(み)ち 名もなき歌は 永遠(えいえん)を抱(いだ)く --- 嗚呼(ああ) 老子(ろうし)よ あなたの言葉は 風に消え 水に溶(と)け それでも残る 人の胸に 見えぬ道(みち)の 響(ひび)きとして 静かなる無(む)の歌 永遠(えいえん)なる自然(しざん)の詩(うた) 無為(むい)にして 全(すべ)てを治(おさ)め やがて道(みち)へと還(かえ)る

