書き出し 午前二時 波形は痩せた心電図 言い訳ごと圧縮して 指先から夜間飛行 「どうせ」を包帯にして 伏せた画面がまぶしい 鳴ってもない通知音へ 耳だけ先に振り返る 入ったこともない部屋 イヤホン越しの生活音 わたしの知らない今日へ たった三分 潜り込む 届いてほしい 届いたら怖い ここから先は聴かないで やっぱり最後まで聴いて 拍手は遅れて届く 眠れない部屋を抜けて 名前も知らない君の 三分間に棲みついた 嬉しいほど 怖くなる 消したいほど 残したい ひとりで投げた夜なのに もう ひとりじゃ鳴れない 丸い窓が増えるたび この部屋が狭くなる 隠した声の輪郭を 知らない人が知っている 二文字だけの「好き」が 昨日の傷に効きすぎる 次の無音が怖くって また夜更けを切り刻む 近づくほど 遠くなる 見つかるほど 隠れたい 矛盾だらけの呼吸まで イヤホンの奥へ送信中 拍手は遅れて届く 眠れない部屋を抜けて 名前も知らない君の 三分間に棲みついた 嬉しいから 怖くなる 怖いままで 残したい 誰にも見せない夜だった もう 誰かに鳴っている 数えれば ただの記号 画面を閉じれば 生活だ 朝の電車 帰り道 それぞれの夜がある その片隅で鳴れたなら それを拍手と呼んでいい? 返事の代わりにもう一度 この続きを鳴らすから 拍手は遅れて届く 眠れない朝を連れて 名前も知らない君と 同じ瞬間を鳴らしてる 嬉しいほど 怖くなる 消したいほど 残したい ひとりで投げた夜たちが 今 わたしを鳴らしてる 遅効性の拍手 今ごろ胸に効いてる もう少しだけ もう一曲 眠れないままを鳴らそう