嵐のあとに 凪いだ海で 破れた帆だけが 空を見ていた 濡れた海図は 夢を滲ませ 羅針盤さえ 眠ったまま 遠い島影 探していた 名前も知らない 朝の向こう 進む理由も 帰る場所も 波の音だけが 隠していた もうだめだと 呟いた声を 風も拾わず 海へ溶けゆく その時きみが 何も言わずに 冷えた指先を 包んでくれた 見えないまま 知らないまま 夢に迷いかけた 凪の真ん中で きみがくれた追い風が この帆を膨らませる まだ行ける まだ行ける 海は続いてる 錆びた錨を 抱えたままで 深い青さに 目を伏せていた 選べなかった 昨日の航路 胸の奥でまだ 軋んでいる だけどきみの 小さな言葉が 夜明けの波間に 光を落とす 答えじゃなくて 道でもなくて もう一度だけ 進める力 風待ちのまま 止まった船に きみの温もりが そっと触れた 迷いの海が ほどけるように 白い帆がいま 息を返す 見えないまま 知らないまま 夢をなくしかけた 霧の真ん中で きみがくれた追い風を この胸に受けながら まだ行ける まだ行ける 朝は遠くない どこへ行くのか まだ分からない それでも舵を 握りしめた 失くしたものが 星になるなら この海図にも 灯りはある 破れた帆でも 風を抱ける 傷ついた船でも 海を渡れる きみがくれた あの日の声が 胸の奥で 航路になる 見えないまま 知らないまま 夢に迷いかけた 凪の真ん中で きみがくれた追い風が この帆を膨らませる まだ行ける まだ行ける 海は続いてる 見えないまま 知らないまま それでもわたしは 舵を取る きみがくれた追い風を 未来へ繋いで まだ行ける まだ行ける 水平線の向こうへ 風待ちの詩に 朝が差す 名もない航路を 進んでゆく