「第八には行くな」と言われた 「あの大佐は呪われてる」と それでも俺は立っている 隊舎の前で 息を呑む 焼け焦げた軍服で 左腕をぶら下げたまま 血だらけの顔で笑いながら 「よう 新入り ようこそ」 語らない傷が いくつあるんだろう 地獄の底から 何度歩いて帰った ——何度でも あの人は死なない どうしたって死なない 炎の中でも 崩れる空の下でも 折れた骨で立ち上がる 疲れた笑みと 優しい目で 「九命の鷹司」——九つじゃ足りない 肩をすくめて ただ笑うだけ 「まあ なんか生きてるな」 東の壁が吹き飛んだ朝 三人を庇って倒れた 瓦礫の下から引きずり出されて 「何をそんなに騒いでる」 崖から落ちても 誤射を受けても あの人は立っていた 衛生兵はもう驚かない ただ やれることをやるだけだ 怒鳴らない 見捨てない 日が暮れたら全員の名を呼ぶ ——一人残らず あの人は死なない どうしたって死なない 炎の中でも 崩れる空の下でも 折れた骨で立ち上がる 疲れた笑みと 優しい目で 「九命の鷹司」——九つじゃ足りない 肩をすくめて ただ笑うだけ 「まあ なんか生きてるな」 夜更けの隊舎 灯りがひとつ 影が静かに座っている 痛みで眠れない夜を 誰にも見せずに 朝を待つ それでも あの人は 声ひとつ 上げない 「俺が怖いか?」とある朝聞かれた チョコレートを差し出しながら 「こんな傷だらけのおじさんだぞ でも 怖い男じゃないよ」 あっけらかんと笑うその顔 温かくて 飾りがなくて この傷だらけの大佐のそばが 一番安全な場所だと知った あの人は死なない どうしたって死なない 炎の中でも 崩れる空の下でも 折れた骨で立ち上がる 疲れた笑みと 優しい目で 「九命の鷹司」——九つじゃ足りない お茶を注いで 肩をすくめて 「まあ——生きてるし それで十分だろ」


