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重力エンジンの子どもたち

だいじょうぶ ここは家じゃない でも 帰ってこれる縁側だ 月は家じゃない でも君と僕の縁側 息をととのえ 靴ひもむすぶハブ 極の影に眠る水が 小さく囁く 「ここから先へ——帰る場所はここにある」 地図の代わりに 掌をひらいて 鼓動をひとつ 未来へ送る 太陽は核融合炉——命をあたためる火 世界をまわす 見えない電力 ブラックホールはゴミ箱じゃない 重力エンジン 形を変えて巡らせる 消えたようで 消えないものが 僕らをまた はじめへ運ぶ 朝を編む光が 葉脈の線路を走る 光合成の歌が 食卓まで届く 海底の闇でさえ 微かな熱を抱いて 「別のやり方で 生きていい」と言う 失しなった地図の跡に 指で円を描き 今を囲う 太陽は核融合炉——命をあたためる火 影にも等しく 針路を照らす ブラックホールは終点じゃない 宇宙のコンポスター 情報はほどけて芽吹く ほどけながら ほどかれながら 物語は 次の章へ 無音のジェットが 銀河を撫でる 星の誕生を 遠くで調律する 「なくなること」と「めぐること」の 狭間で 僕らは踊る 家じゃないけど 帰れる場所 闇じゃないけど 眠れる場所 ——月の縁側で 呼吸を合わせる 太陽は核融合炉——心の燃料じゃなく火そのもの 寒い世界に 朝を配る ブラックホールはゴミ箱じゃない 重力エンジン 終わりを抱きしめ出発へ そして月は 前哨基地(ぜんしょうきち) 旅の途中で 肩を並べる 手を叩けば 真空にも響くリズム 帰り道は 行き道の裏側 縁側に置いた ぬくもりを灯に また行こう また還ってこよう