
Crossing Paths【新・異世界で始める二人旅07】
[Intro] 違う道を 歩いてきた それなのに ここで会えた [Verse 1] 静かな光が 夜へ溶けてく 長い眠りから 目覚めるように 君が探してた 大切なもの 僕にはまだ 分からないけど [Pre-Chorus] 偶然と呼ぶには 少し不思議で 見えない糸が つながっていく [Chorus] Crossing Paths 違う道の先で 僕らは出会った 君の願いと 僕の願いが いつか同じ 明日へ続くなら ここから 一緒に行こう [Post-Chorus] Take my hand Walk with me まだ知らない 世界へ [Verse 2] 君が話した 昔の物語 千年前の 名前もない奇跡 僕が隠してた 本当のことも 君はただ 信じてくれた [Pre-Chorus] 帰る場所さえ 分からない僕に 初めて見えた 小さな道しるべ [Chorus] Crossing Paths 違う夢を抱いて 僕らは歩き出す 君は世界を 僕は答えを それぞれ探す ものは違っても 隣で 歩いていける [Hook] One step Two hearts Follow the light One road Two dreams Into the sky Crossing Paths Here we go 新しい 旅へ [Bridge] ひとりで歩くことに 慣れていたはずなのに 「一緒に」と 聞こえた言葉が なぜだろう 少し嬉しくて 昨日までの 不安さえ 今は 風に変わる [Last Chorus] Crossing Paths 違う道の先で 僕らは出会った 君の願いも 僕の願いも まだ答えなんて 見つからなくていい ここから 探しに行こう Crossing Paths どこまで続くのか まだ分からないけど 君と並んで 歩くこの道が いつか僕らの 物語になる さあ 明日へ行こう [Outro] 【Episode Story】 【第7話・Crossing Paths】 黎明の印《アルカ》を包んでいた黄金色の光が、ゆっくりと静まっていく。古びた遺跡の最奥で、主人公と巫女は朝日のような紋様が刻まれた石碑を見上げていた。 「これが……黎明の印《アルカ》。」 「ずっと、これを探していたんですか?」 「はい。ですが、私も実物を見るのは初めてです。」 巫女は石碑へ近づく。 「私の家系に残る記録には、この森のどこかにあることと、紋様と名前しか残されていません。正確な場所までは分からなかったのです。」 「それじゃあ、今まで何度も探して?」 「はい。ですが、一度も辿り着けませんでした。あなたが現れるまでは。」 主人公は自分の手を見る。 「僕のスキルが反応したから……。」 「はい。なぜあなたのスキルが印に反応したのかは、私にも分かりません。ただ、偶然ではないような気がします。」 その時、石碑の光が揺らぎ、黄金色の紋様に黒い濁りが走った。 「……やはり。」 「どうしました?」 「印の力が弱っています。」 巫女は杖を握る。 「記録には、長い年月を経ることで五つの印は少しずつ力を失い、印の力が失われるとその国に異常や災いが現れるとあります。」 「あの魔物があんなに強かったのも……。」 「おそらくは。」 主人公は石碑を見る。 「この印、直せるんですか?」 「はい。私の家系には、弱まった印を再び安定させる術式が代々受け継がれています。そのために、私は旅をしていたのですから。」 巫女は石碑の前に立ち、杖を構えた。 「少し離れていてください。」 「分かりました。」 主人公が距離を取る。巫女は静かに息を整える。そして――。巫女の家に代々受け継がれてきた術式を唱え始めた。杖の先へ淡い白い光が集まっていく。光は細い糸のように伸び、《アルカ》に刻まれた紋様へと流れ込んだ。弱々しく明滅していた黄金色の光が、少しずつ強さを取り戻していく。巫女の額に汗が浮かぶ。それでも杖を下ろさない。やがて――。ブォォォン……。低い振動とともに、黄金色の光が遺跡全体へ広がった。石柱。石畳。森の木々。すべてが一瞬、夜明けのような光に照らされる。そして、静寂。先ほどまで漂っていた不穏な気配が、嘘のように消えていた。巫女はゆっくりと杖を下ろす。主人公が駆け寄る。 「大丈夫ですか?」 「はい。」 少し疲れた様子だったが、巫女は笑顔を見せた。 「成功しました。」 二人は《アルカ》を見上げる。 「黎明の印は、再び安定しています。」 主人公も安堵した。 「よかった……。」 「はい。」 巫女も嬉しそうに頷く。だが、その視線はすぐに真剣なものへ変わった。 「ただ……。」 「?」 「これで終わりではありません。」 主人公が巫女を見る。 「印は全部で五つ。残りは……あと四つあります。」 ――二人が街へ戻る頃には、空はすっかり夜に染まっていた。主人公は疲れ切った足取りで、旅人ギルドの扉を押す。ガチャッ。 「戻りました……。」 近くにいた冒険者が振り向く。そして主人公の姿を見て眉を上げた。服は汚れ、ところどころ破れている。顔や腕にも小さな傷が残っていた。受付の女性も気付いた。 「あ、お帰りなさい。」 そして数秒。主人公の姿を上から下まで確認する。 「……。今日、薬草採取でしたよね?」 主人公は苦笑した。 「その予定だったんですけどね……。」 受付が怪訝そうな顔をする。その隣から巫女が一歩前へ出た。 「西の森に現れた大型魔物について、討伐報告をお願いできますでしょうか。」 受付の表情が止まった。 「……討伐?」 「はい。」 「西の森の……大型魔物を?」 「はい。」 受付は巫女を見る。次に主人公を見る。 「どなたが……?」 主人公が小さく手を上げた。 「えっと……。」 巫女と顔を見合わせる。 「僕たちです。」 ギルドの空気が、一瞬で静まり返った。少し離れた場所から声がする。 「……は?」 「こいつ、Fランクだろ?」 「魔力ゼロの新人じゃなかったか?」 「確かスキルも正体不明って……。」 主人公は小さく呟く。 「思ったより有名になってる……。」 「失礼ですが……本当に討伐されたのでしょうか?」 主人公は苦笑する。 「まあ、そうなりますよね。」 腰の袋へ手を入れる。そして。ゴトッ。受付台の上へ、大きな黒い魔石を置いた。周囲の空気が変わる。 「……!」 受付が目を見開いた。近くにいた冒険者たちが次々と集まってくる。 「おい……なんだよ、この大きさ!」 「こんな魔石、見たことないぞ。」 受付は慎重に魔石を確認する。表面を調べ、記録と照合する。そして数十秒後。ゆっくりと顔を上げた。 「……間違いありません。」 ギルドが再び静まり返る。 「西の森で確認されていた大型魔物のものと判断できます。」 一拍。そして――。 「うおおおおおおっ!!」 ギルド中から歓声が上がった。 「マジかよ!」 「本当に倒したのか!」 「Fランクだぞ!?」 「一体どうやったんだよ!」 主人公は慌てる。 「いや、僕一人じゃありませんから!」 隣の巫女を見る。 「この人がいなかったら、絶対に勝てませんでした。」 巫女もすぐに首を横に振った。 「いいえ。私も、この方がいなければ生きて戻ることはできませんでした。」 主人公が巫女を見る。巫女も主人公を見る。受付はそんな二人を見て、少し微笑む。 「では――。お二人で討伐されたのですね。」 二人は顔を見合わせる。そして同時に頷いた。 「はい。」 再び歓声が上がった。主人公の肩を叩こうとする者。質問を浴びせる者。魔石を覗き込む者。ギルド中が興奮に包まれていく。 ――その後。その日の夜。 ギルドの騒ぎからようやく解放された二人は、宿の食堂で向かい合っていた。主人公は一息ついた。 「やっと落ち着きましたね……。」 「そうですね。」 巫女も少し安心したように微笑む。 「皆さん、随分驚いていらっしゃいました。」 「僕も驚きました。」 「何にですか?」 「僕があんなに覚えられていたことに。」 巫女が小さく笑う。 「やはり珍しいのだと思います。」 「魔力ゼロがですか?」 「それだけではありません。」 「?」 巫女は主人公を見る。 「あなたはどこか、不思議な方ですから。」 「それ、褒められてます?」 主人公が尋ねると、巫女は少し考えたあと。 「はい。」 柔らかく笑った。 「私は、そう思っています。」 主人公は少し照れくさそうに視線を逸らした。しばらくして、主人公が口を開く。 「さっきの印について……もう少し聞いてもいいですか?」巫女は静かに頷いた。 「もちろんです。」 少し姿勢を正す。 「その前に。」 「?」 「まずは、私自身のことからお話しした方がよいかもしれません。」 主人公は頷く。 「お願いします。」 巫女は少し考えながら話し始めた。 「私は、代々巫女の役目を受け継いできた家系に生まれました。私たちの家系には、千年前から伝えられている記録があります。」 主人公は黙って耳を傾ける。 「今からおよそ千年前。この世界は、一度崩壊の危機に瀕したと伝えられています。」 主人公の表情が変わる。 「世界そのものが……?」 「はい。」 「ただ、なぜそのようなことが起きたのか。詳しい原因までは、今の記録には残されていません。千年という時間の中で、多くのものが失われてしまいましたから。」 そして続ける。 「千年前、この世界に一人の勇者が現れました。」 「勇者……。」 「はい。」 一拍置く。 「異世界より訪れたという勇者です。」 主人公の手が止まった。 「……異世界!?」 「この世界とは異なる世界から来た方だったと伝えられています。」 主人公は何かを言いかける。だが、まだ口には出さない。巫女は続けた。 「その勇者と共に旅をしたのが、私の祖先である初代巫女です。勇者と初代巫女は世界各地を巡りました。そして、世界の崩壊を止めるために五つの印を世界へ刻みました。」 「五つの印……。」 「はい。その一つが、今日私たちが見つけた――。黎明の印《アルカ》。五つの印によって世界は安定し、崩壊は止まったと伝えられています。」 主人公は少し考える。 「その勇者は……その後どうなったんですか?」 巫女の表情がわずかに曇る。 「……分かりません。」 「分からない?」 「はい。」 巫女は静かに首を横に振った。 「五つの印を刻み、世界を救ったところまでは記録されています。ですが、その後の勇者についての記録は、ほとんど残っていません。元いた世界へ帰ったのか。それともこの世界に残ったのか。その後、どこへ向かったのか。今では、もう誰にも分からないのです。」 主人公は少し残念そうに俯いた。巫女はそんな主人公の表情に気付く。だが、今はまだ理由を尋ねない。 「私の家に残っているのは、初代巫女が後世へ残した記録と、印はいずれ力を失う時がくるということ、その時のために印を修復する術式。そして…。」 巫女の声が少し柔らかくなる。 「いくつかの教えです。」 「教え?」 「はい。」 巫女は柔らかく微笑む。 「困っている方を見つけたら、できる限り手を差し伸べなさい。その優しさは巡り巡って、いつか自分を助けてくれる。」 主人公は静かに巫女を見る。最初に出会った時。自分が困っていた時も、彼女は手を差し伸べてくれた。そして森では、自分とは何の関係もない少女を助けるため、あの巨大な魔物へ一人で立ち向かった。 「だから……。」 主人公が呟く。 「いつも人助けをしていたんですね。」 「はい。」 巫女は少し照れたように微笑んだ。 「もちろん、旅をしながら印の情報を探すという目的もあります。古い伝承を知っている方。昔、遺跡を見たことがある方。その土地にしか残っていない話。いろいろな方との出会いが、失われた印へ繋がるかもしれません。でも…。」 少し間を置く。 「何も情報が得られなかったとしても。」 巫女は穏やかな表情で続ける。 「目の前で困っている方がいれば、お手伝いしたいと思っています。それが私の役目でもあり……。」 少しだけ笑う。 「私自身、そうしたいと思っていますから。」 主人公も微笑んだ。 「あなたらしいですね。」 巫女の目が少し丸くなる。 「……そうでしょうか。」 「はい。」 「初めて会った時も助けてもらいましたし。今日だって、あの子を助けるために一人で戦ってた。」 巫女は少し恥ずかしそうに視線を落とした。 「そう言っていただけると……少し照れますね。」 主人公は小さく笑った。しばらく、穏やかな沈黙が流れる。そして、主人公は意を決したように姿勢を正した。 「それなら……。」 「はい?」 「僕も、自分のことを話しておいた方がいいと思います。」 巫女は主人公を見つめる。 「聞かせていただけますか?」 主人公は頷いた。 「信じてもらえるか分からないんですけど……。」 少しだけ迷う。そして。 「僕は、この世界の人間じゃありません。」 巫女の目が大きく見開かれる。 「……え?」 「少し前まで、こことは違う別の世界で、普通の会社員として暮らしていました。それが気付いたらここにいて…。どうして来たのかも、帰る方法も分かりません。」 主人公は苦笑する。 「ギルドに登録したのも、生きていくためでした。でも正直……、ずっと不安でした。この世界のことも何も知らない。行く場所もない。帰る方法もない。これからどうすればいいのかも……。」 しばらく沈黙。主人公が困ったように笑う。 「やっぱり……信じられないですよね。」 「いいえ。」 巫女は静かに答えた。主人公が顔を上げる。 「信じます。」 「……本当に?」 「はい。」 その声に迷いはない。 「先ほどお話しした勇者も、異世界からこの世界へ来た方です。同じことが千年前に起きているのならあなたのお話を、私は否定できません。」 主人公は少し安心したように息を吐いた。 「よかった……。」 巫女は主人公を見つめる。 そして、何かに気付いた。 「待ってください。」 「?」 「千年前の勇者も異世界から来た。そして、あなたも異世界から来た。」 主人公も気付く。 「……Overtake。」 「はい。あなたのスキルは、《アルカ》へ反応しました。」 偶然なのか。それとも意味があるのか。答えはまだ分からない。しばらくして、巫女が静かに口を開いた。 「もしよろしければ……。」 主人公が顔を上げる。 「一つ、お願いをしてもよろしいでしょうか。」 「はい。」 巫女は少し緊張した様子で、主人公をまっすぐ見る。 「私と一緒に、残る四つの印を探していただけませんか?」 主人公は驚いた。 「僕が……?」 「はい。私は印を修復できます。ですが、その印の場所を見つけられません。今回《アルカ》へ辿り着けたのは、あなたのスキルがあったからです。」 そして、すぐに続ける。 「もちろん、私の事情だけでお願いするつもりはありません。千年前の勇者も五つの印に深く関わっています。印を巡り、失われた記録や勇者の足跡を探せば、あなたが元の世界へ戻る手掛かりが見つかるかもしれません。」 「帰る方法が……。」 「必ず見つかるとは、お約束できません。ただ、今ある中では一番大きな手掛かりだと思います。」 巫女は穏やかに微笑む。 「この世界のことも、私でよろしければお教えします。それから……旅の間、私の用心棒もお願いできれば、とても心強いです。」 「僕が用心棒ですか?まだFランクですよ。」 「存じています。」 「魔力もゼロですし、剣も始めたばかりです。」 「それも存じています。」 主人公が肩を落とすと、巫女はくすりと笑った。 「あなたは、怖くても誰かのために前へ出られる方です。今日も、そうでした。私が危ないと分かって、それでも来てくださいました。」 主人公は少し目を逸らす。巫女は優しく続ける。 「私は……。そういう方と一緒に旅をしたいと思っています。」 主人公は少し黙る。 「もちろん、無理にとは申しません。あなた自身が一緒に行きたいと思ってくださるのであれば、ぜひお願いしたいです。」 主人公は少し考えた。この世界へ来てから。何も分からなかった。行く場所もなく。帰る方法もなく。一人で薬草を集めて。今日を生きることで精一杯だった。ずっと不安だった。主人公は巫女を見る。 「僕も、一人でこの世界にいるのは不安でした。誰かとパーティーを組んで旅ができるなら、その方が心強いです。それに、帰る方法も、僕のスキルがなんなのかも、印に反応する理由も知りたい。」 巫女を見る。 「僕も、一緒に行きたいです。」 巫女は嬉しそうに微笑んだ。 「……ありがとうございます。」 主人公が手を差し出す。 「残り四つの印。一緒に探しましょう。」 「はい。」 巫女もその手を取った。 「よろしくお願いいたします。」 主人公が少し笑う。巫女も笑った。 「頼りにしています。」 二人は握手を交わす。それぞれ別の目的を持っていた二人。世界を守るため、残された印を探す巫女。元の世界へ帰る方法を探す主人公。その二つの道が、この夜、一つになった。 しばらくして、主人公が何かに気付く。 「……あ。」 「どうされました?」 「そういえば、僕たち、お互いの名前をまだちゃんと聞いてませんでしたね。」 巫女は一瞬きょとんとして、やがて小さく笑った。 「本当ですね。ここまで一緒に戦っておいて、今さらですね。」 主人公も笑う。 「ですね。」 二人は改めて向き合った。そして――初めて互いの名を告げた。名乗り終えると、どこか照れくさそうに顔を見合わせ、笑った。 明日、二人はこの街を出る。残された印を探すため。元の世界へ帰る方法を探すため。まだ見ぬ世界へ向かう、二人の旅が始まろうとしていた――。


