
[Intro] カタカタ カタカタ 古い映写機が回りだす 今夜で最後の上映です [Verse 1] 駅前通りの映画館 取り壊しまであと三日 赤い座席を撫でながら 最後の鍵を回しかけた 映写室の棚の奥 名前のない缶を見つけた ラベルに書かれたひと言は 「まだ上映していない映画」 [Verse 2] スクリーンに映ったのは 見慣れた町の交差点 パン屋のおばあちゃんが 売れ残りを袋に詰める 雨に濡れた小学生 傘を忘れて立っている おばあちゃんは店を飛び出し 自分の傘を渡してた [Pre-Chorus] ニュースにもならない 誰も拍手しない そんな一秒が どうしてこんなに眩しいんだ [Chorus] モノクロームのフィルム 白と黒しかないのに 焼きたてのパンの匂いまで ここに届く気がした モノクロームのフィルム 名前も知らない優しさが 誰にも見られない場所で 確かに生きていた [Verse 3] 次の場面は駅のホーム 迷子の男の子がいた 改札を閉めた駅員が 膝をついて話してる 「お母さんはどこにいる?」 男の子は首を振る 駅員は自分の帽子を その小さな頭に乗せた 泣き顔が笑顔になった たったそれだけの出来事 映画の主役じゃない人が 今日も誰かを救ってた [Pre-Chorus] この町に住んでいて 何も知らなかった 毎日すれ違う人に こんな物語があったなんて [Chorus] モノクロームのフィルム 色なんてなくてもいい 誰かが誰かを想うとき 景色はこんなに美しい モノクロームのフィルム エンドロールに名前はない それでも誰かの人生に 忘れられない場面がある [Bridge] 最後のリールが回りだす そこには古い映画館 若い映写技師がひとり 映写室で眠っていた ……僕だ 客席には小さな女の子 帰る時間を過ぎたのに 映画が終わるのを待っている 眠る僕を起こさぬように 女の子は靴音を消して そっと扉を閉めていた [Final Chorus] モノクロームのフィルム 僕はずっと知らなかった 誰かの人生を映す僕も 誰かの記憶にいたことを モノクロームのフィルム 最後の光が消えるまで この町にあった優しさを ひとつも忘れたくない [Outro] 映写機が止まったあと 客席の明かりをつけた 誰もいないはずの一番前 一枚の小さな手紙 「おじさんへ あの日の映画、ありがとう」 裏には日付と 女の子の名前 僕はその名前を見て 思わず笑ってしまった ……そうか 今では僕の娘も すっかり大人になったんだ 明日は久しぶりに 電話をかけてみよう [End]

