午前零時 ネオンが濡れる 黒い扉に金の灯り 甘いだけなら帰りな ここは選ばれた奴の夜 視線ひとつで空気を変える 言葉ひとつで心を奪う 覚悟があるなら入って来い 今夜 値踏みしてやるよ 「どうぞ」 「失礼します! 本日はよろしくお願いします!」 「随分、真面目だね」 「はい!」 「じゃあ聞こう。 なぜここに来た?」 「僕も立派なイケ麺になって お客様を笑顔にしたいからです!」 笑顔? それだけじゃ足りないな この世界じゃ一秒ごとに 選ばれる理由が必要だ 魅せろ MIDNIGHT 夜を支配しろ 名前を呼ばれたその瞬間 誰より輝いてみせろ 甘い台詞じゃ届かない 本気じゃなけりゃ見抜かれる ここは夢を売る場所じゃない 夢を忘れさせる場所さ 「得意な麺は?」 「……そうめんです!」 「そうめん?」 「はい!」 「細いな」 「でも気持ちは極太です!」 「……口だけじゃないだろうね?」 「もちろんです!」 「接客経験は?」 「人形相手に毎晩練習しました!」 「…………人形?」 「はい!本気です!」 フッ…… 面白い なら次だ 「指名がゼロでも笑える?」 「はい!」 「他の奴が売れても?」 「はい!」 「客に断られても?」 「……はい!」 「三回続いても?」 「はい!」 「十回」 「……はい!」 「百回」 「えっ!?」 「答えは?」 「はいっ!!」 そうだ その目を逸らすな 華やかな夜の裏側で 最後に残る奴だけが 本物のイケ麺になれる 燃やせ MIDNIGHT 夜を奪い取れ シャンデリアさえ霞むほど 己の色で染めてみろ 一杯のグラス 一瞬の視線 その全部が勝負になる 笑われたって立っていろ 朝が来るまで終わらない 「最後の質問だ」 「はい……!」 「君を指名した客が 何も話さず泣いている。 どうする?」 「無理に聞きません」 「……」 「話したくなるまで 静かに隣にいます」 「なぜ?」 「僕を選んでくれた人だから。 笑顔になれなくても 来てよかったと思ってほしいです」 …… 「結果を発表する」 「はい!」 「合格――」 「やった!」 「とは言ってない」 「えぇっ!?」 「仮採用だ」 「そ、そんなぁ!」 「そうめんから出直して来い」 「はいっ!! 絶対、本採用されてみせます!」 午前零時 また扉が開く 新人ひとり 夜へ消える 細いそうめん 極太の覚悟 次に会う時 その顔がどこまで イケ麺になってるか―― 楽しみにしてるよ