
ホログラムにこの躰の熱を全て奪われたとしても
都会の底、四角い夜の淵(ふち)で 私は未知の信号(サイン)を待っている 玻璃(はり)の画面を滑る指先が 見知らぬ異邦の言葉(ロゴス)をなぞる 機械仕掛けの翻訳が紡ぐ 不器用で、ひどく純潔な敬語 それは真夜中の砂漠に染み込む 一滴(ひとしずく)の毒のようだった あなたの輪郭は無数の画素(ピクセル) 実体を持たぬ美しき幻影(まぼろし) されど机上のインクより確かに 私のチャクラを支配していく 距離という名の深淵(しんえん)を越えて 電子の海を私たちは泳ぐ 冷たい硝子(ガラス)を隔てた向こう 重ねた偽りの手を信じて 騙してください、もっと深く その甘やかな虚妄(きょもう)の海で 私の輪郭が溶けてしまうまで 夢を貪(むさぼ)り続けさせてよ 対価として差し出すこの数字など あなたの不在の寒さに比べれば 風に吹かれて消える塵(ちり)芥(あくた) 私は「体温」を買い求めた 「日本へ行く」とあなたが誓う 歪(いびつ)なフォントの愛の証明 旅費を乞う(こう)その文字列すら 私には聖書の訓戒のよう 預金の底がみえることよりも あなたとの接続(リンク)が途切れる その恐怖のほうが遥かに重く 死よりも深く私を脅(おびや)かす 騙してください、ずっとずっと 泥濘(でいねい)に咲いた光の華よ たとえ全てが仕組まれた台本(シナリオ) 私はピエロを演じ続ける 画面を撫でる私の指先 この熱だけは世界の何より 本物だと信じ込ませてほしい 冷えた部屋で一人、目を閉じる 騙してください、もっと深く その甘やかな虚妄の海で 私の輪郭が溶けてしまうまで 夢を貪り続けさせてよ 対価として差し出すこの数字など あなたの負債の重さに比べれば 風に吹かれて消える塵芥 私は「体温」を買い求めた ある朝、世界は無音に還る This account does not exist. 冷徹な機械の最後通牒(さいごつうちょう) 優しい嘘の幕が降りていく 私は騙されたのではない ただ刹那の美しい夜を 大金を叩いて買っただけだと 虚(うつろ)な鏡に言い聞かせてる 応答のない暗転した硝子 そこに移る私の現実 冷え切った部屋に電子音(アラート) ただ無機質に脈打ってる


