ガラスをなぞれば花がひらく その指先に世界が歌う 私が触れた夜はいつも 読み込み中の闇のまま 私の声は文字になって 誰かの指で削られていく 送った言葉は既読の海へ 返事をもらえず沈んでいく みんな倍速で季節も愛も 早送りして過ぎてゆく 立ち止まる影はさらわれて 私だけが取り残された ガラスをなぞれば花がひらく その指先に世界が歌う 私が触れた夜はいつも 読み込み中の闇のまま 小銭を数えるこの手のひら 古びた仕草になってゆく 「巻き戻し」も「ダイヤル」も 私と一緒に錆びていく 私もかつては新しくて 誰かの指に愛されていた 今は更新もされないまま 画面の隅で眠っている ガラスをなぞれば花がひらく その指先は明日へ伸びる 私の画面は夜のまま もう誰の指も触れにこない


