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花園のカイネ

遠い鐘が 鳴っていた 朝でも夜でもない空 白い門の向こうから 蔓薔薇だけが 揺れていた カイネは今日も ここに来た 足元の黒い粉を払う 羽から零れた 淡い光 花園の道を 照らしてる 誰もカイネに 言葉をくれない それがなぜだか 優しかった 妖精たちは 笑いながら 花畑の奥へ 飛んでゆく おいで カイネ おいで 花が揺れて 名前を呼ぶ おいで カイネ おいで 白い鳥が 羽を広げる きれいだね きれいだね ここはとても きれいだね 鐘の音に 耳を澄ませば 胸の痛みも 遠くなる 花園の外側で 赤い空が 風の向きを 変えていた 折れた標識 知らない文字 茂みの影に 隠れてる 泉に映る 壊れた窓も 水面を撫でれば 蛍になる 黒い鳥が 名前を呼んだ カイネは紫の花を 越えてゆく おいで カイネ おいで もうひとりに ならなくていい おいで カイネ おいで 鐘の音に 名前を預けて きれいだね きれいだね 黒い羽も 花びらになる 赤い空も 夕焼けになる カイネはもっと 奥へ行きたい 遠い鐘が 鳴っていた 烏はきれいに 歌っていた 夜明け前の 焼けた街 崩れた窓に 空が映る 花のない道を 歩きながら カイネは誰かと 笑ってる 黒い鳥だけ 見下ろして 遠い鐘が また鳴った