−終わりは私に告げる− 「終に救いなど無い」 −生を受け− 月蝕は刻々とすすんでいる 夜蝉が鳴いている 死にたくないと鳴き叫んでいる 屍には落葉が積もり 川となり 海となる すべては千変し  万化し その輪郭をぼかしながら 天高く透く一片の雲に過ぎず 呪われた鬼の子供と呼ばれ 篝火の影絵となりて 唾を吐かれて  泥をなげられて それでも 諸手をかざして 蒼天の縷々を綴る 望まれずに生まれて 愛を知らず枯れていく ああ 生を 誰か彼に真の生を 望まれて生まれても 愛を受けずに朽ちていく ああ 終を 誰か彼に真の終を −死に飽き− おぼろげに霞の橋を渡っていると ふと空を呼ぶ声が聞こえる 戒めんと数多の落葉たちが 「宿報である」 と叫ぶ その声は次第に験仏を越えて 眼下に月光あまねし大河を  ひたすら流れる現と結び 灼熱の虹へと姿を変えていく 「いずこより 生れて いずこへいく」 烈日の不請の清くは 彼のひとの間をすり抜ける あまりにも まぶしすぎて  誰も 気がつくことは無い かなしいことだ ほんとうに おそろしいことだ ほんとうに 暗澹たる中天を跨ぐ灼熱の梯子に 群がる落葉たちが口々に叫んでいる 「枯れて!」 「朽ちて!」 「燃ゆる!」 呪われた鬼の子供は澱みながら 日輪の大つぶに行く手を阻まれ 流れ木の鎖を千切る 塞ぎる六識の縷々と綴りて 望まれずに生まれて 愛を知らず枯れていく ああ 生を 誰か彼に真の生を 望まれて生まれても 愛を受けずに朽ちていく ああ 終を 誰か彼に真の終を 今日を生きてこそ 明日も生きてこそ 枯れてなお 燃えてなお 灼熱の迸りに 朽ちてなお それでも 生きてこそ たしかに 生きてこそ 生きてこそ それでこそ また 生きてこそ 一秒先を生きてこそ 夕日を生きてこそ 夜を生きてこそ 今日も明日も明後日も 生きてこそ 生きてこそきっと… 「終わってしまっては何もならない」