
### 雨宿りの灯 **[Verse 1]** 雨は午後から降り始めた 駅前の舗道を鈍く濡らして 彼女は小さな本屋の軒下(のきした)で 紙袋を抱えたまま立っていた 信号の赤が水たまりに揺れ 通り過ぎる傘が色を落とす 誰かを待つわけでもないのに なぜか帰る足を止めていた **[Pre-Chorus]** 濡れた街は昔話みたいに 輪郭だけを残して霞む 彼女は空を見上げもせず 流れていく時間を見ていた **[Chorus]** 雨が降るたび思い出すものがある 名前もないまま胸に残る景色を 誰にも話さず歩いていく背中へ 街灯の光が静かに寄り添った 雨が降るたび消えないものがある 閉じたページの間に挟まれた季節が 遠ざかる足音を追いかけるように 細い横顔を夜へ溶かしていく **[Verse 2]** 商店街(しょうてんがい)の時計は六時を過ぎ シャッターの音が雨に混ざる 彼女は角の喫茶店(きっさてん)に入(はい)り 窓辺の席で湯気を眺めていた テーブルに置かれた珈琲の輪 曇るガラスに映る横顔 幸せだった日を数えるより これからの日々を考えていた **[Pre-Chorus]** 誰かのために泣いた夜さえ 遠い川のように流れていく 降り続く雨の向こう側で 新しい季節が息を潜める **[Chorus]** 雨が降るたび思い出すものがある 失くしたはずなのに消えない温度を 誰も知らない物語を抱きながら 彼女は静かに明日へ向かう 雨が降るたび生まれるものがある 昨日の自分では見えなかった光が 濡れたアスファルトに揺れながら 小さな希望を映していた **[Bridge]** 夜更けのホームに列車が滑り込み 風が雨粒を連れていく 彼女はポケットの切符を握り 少しだけ微笑んでいた 悲しみは終わらないのではなく 形を変えて寄り添うもの そう知ったような瞳で 流れる窓の外を見ていた **[Final Chorus]** 雨はまだ降り続いている けれどもう同じ雨ではない 街の灯りをひとつずつ越えて 彼女は自分の足で歩いていく 雨はまだ降り続いている けれどもう立ち止まってはいない 名前のない未来へ続く道を 静かな強さで選んでいく そして夜明けの匂いが混ざるころ 彼女の物語はまた始まる。

