息づかいだけが まだ言葉の代わりな 夜明け前のひと時 私の腕の中で、彼女は身をよじり 翼のような腕が 私の腕のぬくもりにふれる そして、私は思い出す はじめて彼女がこの腕におさまったあの日 まだ名前のなかった静けさを 彼女がどれほど小さかったか それは、私が答えることができない問い ただ 抱くしかなかった そして今も 私は彼女を抱いている 木々が 自分を形づくった風を 音ではなく 傾きによって 覚えているように 月日は流れず 地に根を張っていく もう彼女は話す 私が見たこともない川のようなリズムで けれど私は それをなんとなくわかる まだ名前を知らなかった頃から 愛していた何かのように かつて私が子守唄で満たした場所は 彼女の笑いで溢れる 彼女が私の語った物語を忘れても 物語が彼女を覚えている 今夜 眠る彼女の手が 私の肩に休まる その手は 軽やかで 私が知っているなによりも 重い