
【序】 雨上がりの歩道橋 滲んだ灯りを眺めて 知らない誰かの足音が 私を呼び止めた 【一節】 高い壁に囲まれた 小さな街の片隅で 冷たい風を追い越して 今日も歩いていく 帰る場所なんてないよと 強がって笑ったけど 忘れたふりをした景色は まだ胸で揺れていた 【橋渡】 誰かが置いていった 古い時間の欠片 踏まれても消えないような 小さな緑だった 【主歌】 藺(いぐさ)の香りがした 知らない街の真ん中で 忘れたんじゃない 見えなくなっていただけ ねえ、まだいるよ あの日の私がいるよ 【二節】 夜半(やはん)の街並みには 誰もいない風景 流れていく音の波が 寂しさを包んでいく 人が作った光より 星が近かった頃を 忘れたわけじゃなくて 見えなくなっていただけ 【二橋】 あの日見ていた空も 泣きながら見た夢も 消えたんじゃなくてただ 眠っていただけ 【主歌】 藺(いぐさ)の香りがした 乾いた街の真ん中で 失くしたと思った夢が 静かに目を覚ました ねえ、まだいるよ 小さな私がいるよ 【間奏】 (透明な鍵盤の音) (重なるコーラス) (遠くで揺れるギター) 【三節】 もしも明日 全部忘れてしまっても この匂いだけは きっと覚えている 全部抱きしめて 今日を歩いていく 帰る場所じゃなくて ずっと居た場所だった 【結歌】 藺(いぐさ)の香りがした 誰も知らない街角で 戻れない時間さえ 優しくほどけていく ねえ、まだいるよ ここにいるよ あの日の私も 今の私も 同じ空の下で ちゃんと繋がってる 藺(いぐさ)の香りがした 夜明け前の静けさで 新しい朝へ向かう 小さな背中を押した 「まだ忘れてないよ」 小さく手を振った 【結】 雨上がりの街で 緑が揺れていた 名前のない記憶が 今日も私の中にいる

