
アンブレラ 雨の中 あなたを探していた 駅の改札 コンビニの前 濡れた歩道の隅 いつも 守ってくれたのに わたしを 救ってくれたのに どうして わたしは あなたを忘れていたんだろう あなたは透明だった それなのに 雨を受け止めてくれた 名前も書かずに 連れて歩いて ありがとうも言わずに どこかへ置いてきた 友達が言うの もう忘れなよって 同じのなんて 五百円で買えるじゃないって でも違うの 忘れたから 忘れられないの 雨のたびに 探してしまうの アンブレラ アンブレラ あなたはどこにいるの 同じ顔で 同じ透明で 雨の中 わたしを見ないで アンブレラ アンブレラ 五百円で買える 誰かじゃ あの日のあなたに なれないの 店先に並ぶ あなたと同じ顔 どれを見ても あなたみたいで どれを買っても あなたじゃない 知らない誰かを あなたが守っていても もう わたしにはわからない わたしも間違えて 他人のあなたに 守ってもらったことがある 傘立ての中で 一緒に並ぶ 同じ顔 ねえ答えて あなたはどこなの 答えは 雨の中 同じ顔が 笑う アンブレラ アンブレラ 忘れたから 忘れられない 透明なあなたを 透明なまま わたしは なくしてしまった アンブレラ アンブレラ 雨の日だけの 恋人 どうして今も わたしだけ 濡れているの 雨の次の日 友達が笑っていた 透明な傘を 肩にかけて ねえ それ どこで買ったの 友達は なんでもない顔で言った 駅にあったから 借りてきた その持ち手の 小さな傷を わたしは 知っていた あなたは そこにいた わたしの知らない顔で 友達を守っていた アンブレラ アンブレラ あなたはもう わたしの雨を 覚えていないの アンブレラ アンブレラ 同じ顔で 同じ透明で どうして そんなに 優しく開くの アンブレラ アンブレラ 五百円で買える 関係なのに こんなに痛いなんて 知らなかった 雨はまだ 降っている わたしの手だけが 濡れている あなたは今 友達の肩を 濡らさない

