
"その外を 問うなかれ" 石の空に ひびが走る 旅立ちから 四百年目の朝 子らよ 天頂を見上げておいで 六十年前の 話をしよう あの日も 空は鳴いていた 帆 を失くした 舟が軋み 浮かぶ石の あいだを縫って 私は 君を追いかけた 行かせない 行かせない 金の角に 光が満ちる 紫の雷 ふりほどいて この手は まだ届く 君が ほ と呼ばれるなら 私が 君の柱だ 八つの年 舵の間の扉の前 君は壁に 指をあてて 「石の向こうに 宇宙がある」と 内緒の声で 笑ったね 紅い紐を ふたりで編んで 君の手首に 巻こうとしたら 「あなたが持っていて」と 君は 首を振った 星の脈が 聞こえる子は いつか 帆 に なるという 大人たちの その言葉を 十年遅れて 私は知った 行かせない 行かせない 君の言う 宇宙なんて いらない 石の空の 内側で ふたり 生きていけばいい 君が 帆 と呼ばれるなら 私が 君の柱だ 刃を返す (手を離して) 雷を斬る (舟が落ちる) 石が浮かぶ (みんな落ちる) 頬をかすめる (だから 行くの) いつか ふたりで見るはずだった (いつか あなたに見せたかった) 宇宙を―― 私は 手を ひらいた 腰の赤い紐を ほどいて放つ 光の柱を 昇る紐を 君の指が やっと掴んだ ひらいてく ひらいてく 石の空が 四百年目に はじめて見る 宇宙の下 六十年 君が運んだ朝 天頂に灯る 紫に ひとすじの赤 君は 私たちの―― (空の外に 宇宙はある) (その名を 忘るなかれ) 見えているよ 見えているよ

