
Stage 5 陰口収集車
九時四十分 給湯室。誰かを嘲笑うヒソヒソ話。安全な場所から石を投げる声。 十四時三十分 いかにも優しげな声色で紡がれる、「教えてもらってないの? いろんなことができてないんだね」 ……ノートの余白にペンを走らせる。悪意のログが充実していく。 ただ静かに集め続ける 自分を守るためだと、そう言い聞かせ 容量の悪い、不器用なピースを演じて 鏡の前、人懐っこい笑顔の練習 絶妙な角度で眉を下げてみせて 助言を仰ぐフリをする 十六時五分 背中越しに響く、誰かのミスを嘲笑う声。 誰かの顔色を窺いながら、余裕のなさが透けて見えるそのこざかしい横顔。 ああ、本当はギリギリの所で追い詰められているんだね。 崖から突き落として見下ろすのは、私だから。 本当は胸の奥が軋んでいるのに。 傷つかないフリをして、ただ静かに集め続ける。 容量の悪い、不器用なピースを演じて 頭を下げる視線の先、その底の浅さを数えて 哀れなほど安っぽい自尊心を撫でて 助言を仰ぐフリをする インクを重ねる 真っ黒なページが、一つ、また一つ 世界の全てだと信じて疑わない、この狭い水槽の中で 優越感の裏側で溺れまいともがくあなたと その無様さを紙に書き殴る音に、いつの間にか酔いしれる私 ……ミスが、増え、る。 処方された、薬、ただ眺める、だけで。 筆圧で破れたページ、崩れ落ちていくのは、私、じし、ん 頭の奥で、甘くて黒い声が囁く。 「……あなたの子供、今年大学受験なんですね? もし、あなたが働けなくなったら…… お子さん、どうなるんでしょうね?」 十八時 定時。今日も笑顔で「お疲れ様でした」。 擦り切れた心 そっと隠して、今日のエラーログを手帳に深く刻み込む。 いつか、筆跡で歪んだこの重たいノートを、見えない鈍器に変えて。 あなたのそのこざかしい頭蓋をかち割り、中身をドロドロに掻き回すその日まで。 ただ、その時を静かに待つことだけが、今の私の、そ、ん、ざい、しょ、う、め、い—— 知的さを装った、破滅願望。


