
[Verse 1] 高架下 劣化した看板 薄明かりの間で反転 秒針が舌を噛んだまま まだ何も言わずに立ってんだ 噛み殺す衝動 街に紛れ 目を閉じりゃ 赤い残像 濁った水槽 笑う仮面 全部嘘でも構わない [Pre-Chorus] 近くて遠い 距離感の罠 掴んだつもりで空を掴む 呼吸だけが 街を回す 崩れてく形も愛す [Chorus] 浮遊標本 宙に固定 声と声の隙間で崩壊 毒を飲んで 笑うみたいに もう戻れないって 知ってて吸い込む [Verse 2] ネオン屑 目に焼き付け 記憶だけ残し薄れてく 軋む床 裏拍で 夜を跨いで 足音が跳ねてく 骨まで響く低音の渦 喉の奥で笑う影 甘いフリした青いナイフ 刺さる痛みでしか生を知れない [Pre-Chorus] 近くて遠い 距離感の罠 掴んだつもりで空を掴む 呼吸だけが 街を回す 崩れてく形も愛す [Chorus] 浮遊標本 宙に固定 声と声の隙間で崩壊 毒を飲んで 笑うみたいに もう戻れないって 知ってて吸い込む [Bridge] 名前もいらない 価値もいらない ただ脈があるうちは 騙し合いたい 溶けた感情を瓶に詰めて 次の夜に漂わせる [Final Chorus] 浮遊標本 夜を裂いて 脈を数えて 僕らは走る 同じ未来を 違う声で刻み それでもまだ 終われないまま ------------------------------------------------------------ ## ライナーノーツ|浮遊標本 ## この曲は都会の真空パックみたいな夜を切り取ったもの。 人の気配はあるのに、誰も本当には触れられない。 そんな距離感で呼吸し続ける生き物たちを「標本」と呼んだ。 瓶の中で揺れるそれは死んではいない。ただ、動けないだけ。 「近くて遠い 距離感の罠」は、空間の話じゃない。 触れれば壊れると知っていても、手を伸ばしてしまう心の距離のこと。 その往復は、呼吸のように繰り返され、逃げ場のないリズムになる。 その先にあるのは、痛みと快楽が同じ水面で揺れている瞬間。 破滅を知りながらその温度を確かめずにはいられない。 名前もいらない。価値もいらない。 外からの評価や分類から解放されたいという欲望を、まっすぐに突きつける。 それは孤立の宣言ではなく、むしろ自分をまるごと瓶に入れる覚悟に近い。 形を失った感情を、その歪なままで保存しようとする意志が、そこにある。 「浮遊標本」というタイトルには二つ意味がある。 一つは漂うまま固定されるという矛盾。 もう一つは自分の意志で動けない存在への痛みと興奮。 都会は時にそこにいる全員を標本にしてしまう。 それでもガラス越しに見えるその光景は、どうしようもなく美しい。

