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能力者になった僕|お題:星ニーナさん

V6

月曜日の朝 はちじじゅうごふん 駅前で突然それは起きた 知らないおじさんの口は閉じてる なのに声だけ聞こえてきた 「昨日のプリン食べたの俺です」 えっ? なんだそれ 振り向けばおじさんは知らん顔 どうやら僕は目覚めたらしい 世にも奇妙な能力に 口に出せなかった言葉だけ なぜか僕には聞こえてしまう 秘密の恋も 小さな嘘も 街じゅう声でいっぱいだ 言えない 言えない 誰にも言えない 胸の奥にしまった言葉 聞こえる 聞こえる 僕だけ聞こえる 本音だらけの交差点 スーパーヒーローになったのに 空も飛べない 火も出せない だけど誰かの沈黙が 僕にはちゃんと聞こえるんだ 火曜日の午後 さんじよんじゅっぷん 喫茶店で二人が向かい合う 「別に怒ってないよ」と笑う彼女 心の声は大騒ぎ 「記念日くらい覚えててよ!」 思わずコーヒー吹き出した 隣の席では老夫婦 無言でケーキを分け合っている おばあさんの心から 小さな声が聞こえてきた 「来世でもまた あなたがいい」 おじいさんは黙ったままで 最後の苺を差し出した 言えない 言えない それでも伝わる 言葉にならない愛もある 聞こえる 聞こえる 優しい音が 何でもない日に隠れてる 水曜日の夜 じゅういちじすぎ いつも明るいあの人から 「今日も楽しかったね」と いつもの笑顔が届いた だけどその奥で かすかな声が震えていた 「本当は少し疲れちゃった」 「誰かに甘えてもいいのかな」 僕は初めて気がついた 優しい人ほど上手に隠す 誰かの涙を拭う手が 自分の涙を隠してる どうしてだろう 聞こえるはずのない声が 今夜はこんなに胸に響く 言えない 言えない その一言を 無理に聞き出したくはない 聞こえる 聞こえる だからこそ僕は 返事を急がず隣にいたい 世界中の本音を知っても 人の心を全部は知らない どんな言葉をかけるより ただ一緒に笑える日もある 木曜日の朝 しちじちょうど 僕の能力が消えていた 駅前のおじさんも 喫茶店の恋人たちも もう何も聞こえない 少しだけ寂しかったけど 不思議と怖くはなかった あの人から届いたメッセージ 「今日も素敵な一日を」 僕はいつものように返した 「あなたにもね」と それからもう一度 打ち直した 「今日はあなたの話も聞きたいな」 言えない 言えない そんな日があっても 無理に笑わなくていいんだよ 聞こえない 聞こえない それでも僕らは 心を寄せ合えるから スーパーヒーローじゃなくても 空を飛べなくても構わない 大切な人の小さな変化に 気づける僕でいたいんだ 金曜日の朝 はちじじゅうごふん 駅前のおじさんが叫んでた 「プリン食べたの誰だー!」 僕は思わず笑ってしまった どうやら犯人が変わったらしい そして今日も街は動き出す 聞こえない声を抱えながら